20年前に出版された絵本「井上ひさしの子どもにつたえる日本国憲法」(講談社)が、今年に入って再び光を浴びています。作家・劇作家の井上ひさしが、「これだけは読んでほしい」という前文と第9条をやさしい言葉で書きました。画家・いわさきちひろのあたたかな絵がそえられています。「ちひろ美術館・東京」(東京都練馬区)で10月17日、編集者が出版のいきさつを語り合うイベントが開かれました。【篠口純子】
この絵本は2006年に出版されました。前半は井上がやさしい言葉で前文と第9条を「翻訳」し、後半は朝日小学生新聞の連載をもとにした語り口の解説になっています。
井上は10歳で終戦をむかえました。それまで国民学校(いまの小学校)の先生から、大人になれば戦争に行って死ぬものだと教え込まれました。80年前に日本国憲法が公布されたときの気持ちについて、出版されたときの記者会見で語っています。「戦わないというのは勇気のいること。世界でもこんな国は、まれです。ほこらしく思いました」
憲法改正に強い意欲を示す高市早苗・総理大臣が今年2月に第2次内閣を発足させると、ネット書店で注文が急増しました。書店にも並び、売れ続けています。
イベントでは、この本にたずさわった編集者の大竹永介さん、塩見亮さん、五十嵐千恵子さんが、企画から出版にこぎ着けるまでの経過を語り合いました。
企画が始まったのは1999年ごろ。井上のモットー(目標・行動の指針)は「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく……」です。大竹さんは「日本語に関して言葉の達人である井上さんなら、分かりやすく書いてくれるのでは」と依頼しました。
井上は文章を書くのが遅く、自らを「遅筆堂」と名乗るほどでした。言葉に対するこだわりが強く、出版まで約7年かかりました。
「もう二度と戦はしない」と題した9条のページには、ちひろの鮮やかな赤い絵が選ばれました。五十嵐さんは「9条の言葉に強い意志を感じたので、赤い絵がほしいと思いました」と振り返りました。
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