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 皆さんは、「フリーメーソン」という言葉を聞いたことがありますか?

 映画や小説ではよく「世界を操る秘密結社」として登場することもありますが、フリーメーソンは実在する組織で、世界各地に会員を持つ友愛団体です。会員同士の助け合いや人格の向上を大切にしており、世界中に600万人の会員がいると言われています。正確には「フリーメーソンリー」が団体の名前ですが、ここではフリーメーソンと呼びます。

 イギリスはその発祥の地として知られ、シャーロック・ホームズ物語の作者アーサー・コナン・ドイルも会員でした。そのためか、ホームズの作品にもよく登場します。

 有名なのは、短編「赤毛組合」です。ホームズは質店の主人を見るなり、「あなたはフリーメーソンですね」と言い当てます。会員であることを示す胸飾りピンをつけていたからです。

 短編「ボヘミアの醜聞」では、ホームズが「馬を扱う人には、フリーメーソン的な仲間意識がある」と話す場面があります。ここでは「強い仲間同士の結びつき」を示す言葉として使われています。これは作品の舞台となる19世紀のイギリスの人々が、フリーメーソンをよく知っていたからこそ通じる表現でした。

 フリーメーソンは中世の石材職人(メーソン)の組織が起源とされています。石造りの建物が多いヨーロッパで、もともとは城や教会を造る技術者が知識を共有する集まりでしたが、それが徐々に友愛団体になりました。1717年にはロンドンで複数のロッジ(集会所)が統合し、世界初の本格的なグランドロッジ(地域を束ねる集会所)が誕生しました。シンボルの「定規とコンパス」は、職人の道具の名残でもあります。

 私は2025年2月にロンドンのグランドロッジを取材しました。「実は政治家を操って、世界征服を企んでいませんか」と聞いたら、職員は笑って「よく聞かれますが、政治活動はせず、むしろ集会で政治の話は禁止です。国際政治を操るなんてありえません」と否定していました。

 活動は慈善団体と変わらず、たとえば新型コロナウイルス流行の時は外出できない人々に食事を配達したりしたそうです。建物の中にはお土産コーナーもあり、観光客でにぎわっていました。

 開かれた印象でしたが、取材中に「秘密結社」の側面を感じたこともあります。それは入会手続きについて聞いた時です。「入会の時には『儀式』がありますが、内容は会員だけの秘密です」と言われ、絶対に教えてくれませんでした。

 コナン・ドイルも入っていたフリーメーソン。まだ謎めいたところも残しつつ、今日も世界中で活動を続けています。【篠田航一、写真も】=随時掲載します

 毎日新聞のベルリン、カイロ、ロンドン支局長などを経て外信部長。探偵小説が好きで、2025年には「コナン・ドイル伝 ホームズよりも事件を呼ぶ男」(講談社現代新書)を出版。

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