(CNN) ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、CNNのインタビューに応じた。トランプ米大統領との激しい対立を受け、ウクライナではトランプ氏が再びロシア寄りに転じたのではないかとの懸念が広がっているが、ゼレンスキー氏はこの問題に正面から言及し、トランプ氏との間に個人的な確執はないと説明。一方で、ロシアのプーチン大統領に歩み寄れば「プーチン氏をいっそう強力にする」だけだと訴えた。
米国とウクライナの関係はここ数週間で大きく悪化している。
トランプ氏がロシア産燃料を購入する合意を発表し、ロシアを孤立させる国際的な取り組みを根底から覆したことを受け、ゼレンスキー氏はトランプ氏が「歴史の誤った側に立っている」と批判。その後、トランプ氏は一部の対ロシア制裁の適用を免除し、与党・共和党内からも批判を浴びた。ウクライナ軍では、実業家イーロン・マスク氏が運営する衛星通信サービス「スターリンク」の利用が制限される事態も起きた。
首都キーウからCNNの取材に応じたゼレンスキー氏は、トランプ氏との対立は「個人の問題ではない」と述べ、融和的な姿勢を示す一方、プーチン氏に戦争を終わらせる意図はないと警告した。
「プーチン氏に対する私の態度は明確だ。制裁を解除すれば、プーチン氏をいっそう強力にする結果になると思う。トランプ大統領との間に個人的な確執はない。当然、私はあらゆる制裁解除に反対だ」(ゼレンスキー氏)
ゼレンスキー氏がCNNの取材に応じたのは、トランプ氏の特使が4年半に及ぶ戦争の解決に向けた糸口を探り、外交努力を再び活発化させているタイミングだった。
ウィトコフ米特使は21日、ロシアのサンクトペテルブルクでプーチン氏と3時間にわたって協議。拘束されていた米国人スティーブン・ハバード氏(74)の解放を決めたプーチン氏を「人道主義者」と呼び、物議を醸した。ウィトコフ氏はこの前日、ノルウェーでゼレンスキー氏と会談していた。
トランプ氏は21日、対ロシア制裁を強化していればハバード氏は解放されず、収監されたままだったと強調。CNNの記者の質問に答える形で、「彼の存在は忘れられて二度と会えなくなっていただろう。あと25年間、刑務所に入れられていたはずだ」と語った。
さらに、制裁を強化すればウクライナを巡る合意の成立が危うくなるとの認識を示し、「合意を間近に控えて繊細な交渉を進めている時に、制裁を科すことはしない」と発言した。
ゼレンスキー氏はノルウェーの首都オスロでの会談について、実りあるものだったと評価する一方、プーチン氏が和平に真剣に取り組むとは思えないと語った。プーチン氏はウィトコフ氏との会談後、11月に協議を行うことに同意したものの、具体的な詳細はほとんど明かさなかった。
ゼレンスキー氏は「プーチン氏は駆け引きを仕掛けている。知っての通り、駆け引きをする人物だ」との見方を示した。
「残念なのは、彼が他人の命をもてあそんでいることだ。もちろん彼は(戦争終結を)望んでいない。だからこそ、パートナー諸国にはプーチン氏が力を増し、我が国を破壊する可能性を与えないでほしいと思っている」
トランプ氏は21日、ウクライナでの戦争終結に向けた合意に「かつてなく近づいている」と述べたが、その夜、ロシアはウクライナに向けて数百発のドローン(無人機)と弾道ミサイルを発射した。
これまでのところ、プーチン氏は領土問題を含めウクライナに最大限の要求をする姿勢を変えていない。ルビオ米国務長官は21日、記者団に「現在の対立は、ドンバス地方の残る地域をどうするかという点に集約されている」と説明した。ドンバスはウクライナ東部の地域で、ほぼロシアの支配下にある。ルビオ氏は「こうした意見相違を解消する方法について、独創的な案がいくつか示されている」とも明らかにした。
ゼレンスキー氏はCNNとのインタビューで、「停戦して殺戮(さつりく)に終止符を打ち、協議の席に着く」ためとして、現在の前線を固定する可能性に言及。ただ、現時点でウクライナの支配下にある領土をロシアに明け渡す案は受け入れられないと明言し、被占領地域をロシアの一部と認めることは決してないと強調した。
ゼレンスキー氏は「我々の土地は非常に重要だ。大切なのは国民であって、領土が何キロあるかという問題ではない」と述べ、「この土地と独立、国を守るために多くの人が命を落とした」と訴えた。
そのうえで「一時占領されている地域をロシア領と認める人は誰もいない。それはロシアも理解していると思う。理解できない人がいるなら残念だが、それはその人たちの問題だ」と付け加えた。
ウクライナ政府は、米国がロシアのミサイル攻撃に関する情報共有を制限したと非難。重要な衛星通信サービス「スターリンク」の通信速度の低下や、兵器供与の遅れについても批判の声を上げていたが、一部では緊張が和らぐ兆しも見られる。
ゼレンスキー氏は今週、情報共有が再開されたと明らかにしていた。ただCNNとのインタビューでは、米民間宇宙企業スペースXの軍事用サービス「スターシールド」については、まだ完全復旧していないと説明した。
トランプ氏は22日、マスク氏がウクライナによる軍事用スターリンクの利用を再開させたと明らかにしたものの、自身から直接要請したかどうかは明言を避けた。
サービスが復旧したとされる後、ウクライナ軍の一部の部隊からは通信速度向上の報告が上がっている。ただ事情に詳しい情報筋によると、すべての地域で改善したわけではなく、速度制限も残っているという。情報筋はCNNに対し、現在の通信速度では「ジェット推進式ドローンの迎撃には明らかに不十分だ」と指摘。ウクライナは米国からの情報提供と説明を待っている状況だが、まだ回答はないと明らかにした。
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