名探偵シャーロック・ホームズはどんな食事をとっていたのでしょうか。
私は子どもの頃、長編「恐怖の谷」でホームズが卵を4個食べるシーンに驚いたことを覚えています。ずいぶん卵をたくさん食べる人だな、と思いました。
ホームズが住んでいたのは、ロンドンのベーカー・ストリートの下宿です。ホームズは親友ワトソン博士と朝食をとりながら、事件についてよく話すことがありました。その時の食事は、卵、ベーコン、パンなどが一般的でした。
ホームズにはお気に入りのレストランもありました。それが短編「瀕死の探偵」などに登場する「シンプソンズ」です。実在する店でしたが、新型コロナウイルスが流行した2020年に閉鎖されました。このため、私が22~25年にロンドン支局にいた時は残念ながら訪れることはできませんでしたが、26年にまたオープンしたそうです。
イギリスは「紅茶の国」として知られており、ホームズも紅茶を飲みましたが、一方でコーヒーも好きでした。お酒はワインが好きで、赤ワインも白ワインも飲みました。
また、カレーも時々、作品に登場します。
しかしホームズは、基本的に食べることにあまり関心がない人物でした。一心不乱に推理すると、食事もしません。短編「マザリンの宝石」では、「腹が減っている方が頭がよく働く。消化に血が回ると、頭の血のめぐりが悪くなる」と言っています。
食べ物がテーマになった作品もあります。それが短編「青いガーネット」で、クリスマス用のガチョウが事件の中心になります。
ある男性が落としていったガチョウの中から、高価な青い宝石が見つかりました。ホームズはガチョウの持ち主をたどりながら、宝石盗難事件の真相を解き明かしていきます。
当時のイギリスでは、クリスマスにガチョウを食べる習慣がありました。ガチョウは冬の食卓を代表するごちそうだったのです。
食事にそれほどこだわりがなかったホームズですが、実は料理上手な一面もあります。長編「四つの署名」では、ワトソンとロンドン警視庁のジョーンズ警部に夕食を振る舞います。
メニューは、カキとライチョウを30分かけて調理したごちそうでした。ただ、どんな料理だったのかは詳しく書かれていません。
日本では今、ライチョウは絶滅の恐れがあるとされ、国の特別天然記念物に指定されています。しかし19世紀のイギリスでは、こうして食卓に上っていたのですね。【篠田航一】=随時掲載します
毎日新聞のベルリン、カイロ、ロンドン支局長などを経て外信部長。探偵小説が好きで、2025年には「コナン・ドイル伝 ホームズよりも事件を呼ぶ男」(講談社現代新書)を出版。
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