自宅で飲むお酒を楽しみにしている方も多いと思います。このお酒、10月から税率が変わります。
■2026年10月からビール・発泡酒の税率変更へ
350mlあたり、ビールは約9円減税される一方、発泡酒と第3のビールは7円ほど増税。チューハイやハイボールも7円上がります。
注目は「ビール系飲料」です。酒税がすべて54.25円に、ついに統一されるのです。
■ビール系飲料めぐる国とメーカーの「30年戦争」 鍵は「麦芽」
統一に至るまでには、メーカーと国との「30年戦争」がありました。
鍵となったのは「麦芽」。発芽させた大麦を乾燥させたもので、ビールの味・香り・アルコールなどの骨格を作る最も重要な原料です。
メーカーが目をつけたのはビールに近い発泡酒。麦芽の使用率によって3段階に税率が変わり、当時は67%以上はビールと同額ですが、それを下回ると段階的に税金が安くなっていたのです。
■30年にわたるメーカーと国との知恵比べが続いた“イタチごっこ”の変遷
戦いの幕開けは1994年。サントリーが麦芽の使用を67%より少しだけ減らして、65%にした発泡酒「ホップス」を発売。ビールより45円ほど安い180円の低価格でヒットします。
すると、国は税率の区分を変えて、麦芽50%以上はビールと同額にしたのです。
第2ラウンドは98年。今度はキリンが、税率が一番安くなる25%未満まで減らした『淡麗』を145円で発売。2001年にはアサヒも『本生』を投入し、市場が大きく広がりました。
この年、大手4社のトップが発泡酒の増税に反対するキャンペーンを展開しましたが2003年、国は麦芽率の低い発泡酒も増税に踏み切ります。
「麦芽がダメなら」とメーカーが次の一手に出たのが、第3ラウンドです。
2004年、サッポロが麦芽の代わりにエンドウたんぱくを使った「ドラフトワン」を開発。「第3のビール」という新たな市場を開拓しました。
しかし、国はこれも見過ごさず、第3のビールを狙い撃ちにして税率を引き上げました。
こうして30年にわたってメーカーと国との知恵比べ、“イタチごっこ”が続いてきたのです。
■税率変更の影響は? 専門家「味や品質を追求した本来の競争に」
酒税は近代日本を支えた重要な財源でした。日清戦争後の軍備拡張や日露戦争の戦費確保を背景に増税が繰り返され、明治32年には国の税収の35.5%を占め、国税収入のトップになりました。
しかし2025年度は、約1兆1100億円と額的なピークだった1988年の2兆2000億円の半分で、国の税収の1.3%にとどまるレベルです。
今回、国がビール系飲料の税率を統一した狙いについて、財務省幹部は「ビールと同じくらいおいしくなったものには、同じ税金をかけることが税の公平性の上でも望ましい」と説明しています。
一方、30年戦争がもたらしたものと今後について、酒税に詳しい一橋大学の都留康名誉教授は、「メーカーは節税のために高い技術力を磨き、ガラパゴス化とも言える独自の市場を築いてきた。これからは『どう税金を安くするか』ではなく、『消費者が何を飲みたいか』という、味や品質を追求した本来の競争に戻るだろう」と指摘します。
30年の攻防で磨いた技術を“水の泡”にせず、これからどんな一杯が生まれるのでしょうか。メーカーの新たな挑戦に注目です。
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