香港(CNN) 野放しの人工知能(AI)が人類を滅亡させる危険性に世界がおののくなか、米国と中国の首脳が先ごろ、この画期的な技術に対するそれぞれのビジョンを明確に述べた。
両首脳の発言はほぼ対極に位置していた。
トランプ米大統領は米アンソロピック、オープンAI、グーグルのAI研究者や幹部らが開発を遅らせるよう呼びかける声をよそに、最も重要なのは、激化するAI覇権争いで米国が中国に対する優位を維持することだと述べた。
トランプ氏は12日、「わが国はAIで中国に勝っている。率直に言って、私はその状態を維持したい。AIで勝つ者が勝者になるからだ」と語った。
中国の習近平(シーチンピン)国家主席は13日、国際協力の強化を自ら呼びかけた。新興国の首脳らを前にした演説で、各国が「オープンソースと開放性、協調、共有を促進」するべきだと語り、AIの開発や利用を管理、監督する世界的なAIガバナンスの協定を改めて提案した。ただし、どのような枠組みになるかという詳細には言及しなかった。
トランプ氏と習氏のメッセージの対比が浮き彫りにするのは、AIでの優位を競う一か八かのレースで、米中の両大国間に意見の一致がなく、深い不信感が横たわっている現状だ。
米国はこの分野での優位を、守るべき、そして友好国に輸出するべき戦略的資産ととらえ、自国の武器として活用する姿勢を強めているようだ。一方で後れを取る中国は、より開放的なモデルを提案している。
トランプ氏と習氏の間では来週、米首都ワシントンでの会談が予定され、その行方が注目されている。両首脳は5月に北京で会談した際、AIを運用する上での安全策「AIガードレール」について話し合ったが、大きな成果はなかった。中国商務省は先日、両首脳がAIに関する政府間対話を開始することで合意したと述べた。だが米中はより広い地政学的なライバル関係にあることから、実質的な突破口が開ける望みは薄いというのが専門家らの見方だ。
中国のAIは何年も前から米国の競合相手に後れを取ってきた。その理由の一部は、中国企業による最先端AIプロセッサーの入手を制限している米国の技術管理にある。複雑化が進むAIモデルの訓練には、この入手が不可欠だ。
ところが中国のAI新興企業「ディープシーク」は昨年、従来よりはるかに少ないとされる計算資源で米国の主要システムに近い性能を実現したモデルを発表。世界の業界全体に衝撃を与えた。
それ以来、中国のAI研究機関は開発サイクルを加速させている。アリババやZ.AI、ミニマックス、さらに最近ではムーンショットAIなどが同様の性能を持つモデルを出し、アンソロピックやオープンAIなど米最先端企業の優位に挑んでいる。
ただし中国製モデルの進歩とともに、米国からは不正行為を非難する声がかつてないほど高まっている。米政府とオープンAI、アンソロピックは、中国企業が自社モデルの訓練に米最先端モデルの出力を使うことで、米国の知的財産を盗んだと主張してきた。
米国の連邦捜査局(FBI)や国家安全保障局(NSA)、サイバー・インフラセキュリティー庁(CISA)を含む連邦機関は先ごろ、中国のAI企業が米国の競合他社を相手に「業界規模」の窃盗を働いていると主張した。
またアンソロピックは今月に出した長文の報告書で、中国政府系の運営機関を含む悪意ある行為者が、武器の開発や新疆のウイグル人など少数民族の監視にシステムを悪用しようとしていると、詳細に説明した。
報告書によると、アンソロピックが中国側の偵察の試みに関する機密情報を見つけた例として、ムーンショットのAIモデル「Kimi」に送られた中国軍関係とみられる利用者のクエリ(質問や指示)が同社のAIモデル「クロード」に転送された結果、ムーンショットが利用者からの指示をこっそりクロードに回そうとしていたのが明らかになったこともある。ディープシークなど中国の他社にも同様の活動がみられたという。
中国政府はこの主張を否定し、中国のAI研究機関はほぼ沈黙を守っている。ムーンショットは、CNNの報道についてのコメントを避けた。ディープシークにもコメントを求めたが、返答は得られなかった。
中国外務省の郭嘉昆報道官は14日、「さまざまな脅しの言説を流し、対立や悪意ある競争に向かうことは、世界的なAIガバナンスへの取り組みを妨げるばかりで、だれの利益にもならない」と訴えた。
さらに「開放的、包摂的でだれもが利用でき、人類にとって有益なAIの推進に、全関係者が一体となって取り組むべきだ」とも語った。
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