「シリーズもの」として長く親しまれる作品は、小説でも映画でも必ず「脇役」が魅力的です。名探偵シャーロック・ホームズの物語は長編4、短編56の計60作品ですが、そんな名脇役たちもシリーズの人気を支えています。
もちろんジョン・ワトソン博士はホームズの親友、そして物語の書き手として最も大事なキャラクターです。しかしワトソンだけではありません。
ホームズには7歳年上の兄がいます。それがマイクロフト・ホームズです。実はイギリス政府のかなり重要な仕事を任されており、弟のホームズが「兄は政府そのもの」と呼ぶほどの実力者です。マイクロフトは時々、事件の相談を弟に持ち込む一方、陰で探偵の活動を助ける弟思いの兄です。そしてホームズ自身が、「僕以上の観察力と推理力」と認めるほどの知性の持ち主でした。
難事件が起きると、よくホームズに相談に来るのが、ロンドン警視庁のレストレード警部です。ホームズとは長い付き合いで、時にはライバル、時には協力者となります。
最大の敵といえばモリアーティ教授でしょう。天才的な数学者ですが、実は犯罪組織のボスでもあります。19世紀初頭にヨーロッパ各地を支配した軍人ナポレオンにたとえて、ホームズは「犯罪界のナポレオンだ」と呼びました。
ホームズとワトソンが住む下宿の家主が、ハドソン夫人です。食事を作ったり、来客を知らせたりしてホームズを支えています。ホームズは部屋の中で化学実験をする変わり者でしたが、きっとハドソン夫人は見て見ぬふりをしてくれていたのでしょう。
ちなみにハドソン夫人は「準レギュラー」と言っていいほど頻繁に登場しますが、ファーストネームは不明です。夫人(ミセス・ハドソン)と呼ばれていますが、夫は出てきません。謎の多い人物です。
そしてホームズが「あのひと」と呼ぶ永遠の女性が、アイリーン・アドラーです。以前も紹介しましたが、頭の回転が速く、時にはホームズを出し抜く知力を見せたこともありました。ホームズは生涯、彼女に尊敬の念を持っていましたが、それが恋愛感情だったかは分かりません。
シリーズは魅力的なキャラであふれています。最近の映画やドラマでは、ホームズに妹がいたり、モリアーティ教授との友情が描かれたりと、新たな解釈で脇役たちを活躍させる作品も出てきています。原作者のアーサー・コナン・ドイルが初めてホームズを書いたのは19世紀でした。当時の作者が思いもしなかった広がりを持ち、ホームズは21世紀の私たちを今も楽しませてくれています。【篠田航一、写真も】=随時掲載します
毎日新聞のベルリン、カイロ、ロンドン支局長などを経て外信部長。探偵小説が好きで、2025年には「コナン・ドイル伝 ホームズよりも事件を呼ぶ男」(講談社現代新書)を出版。
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