2001年9月11日、アメリカで「同時多発テロ」が起きました。アメリカは「テロとの戦い」を始め、日本にも影響がおよびました。それから25年がたちます。どんな出来事だったのでしょうか。【林奈緒美】
テロが起きたのは2001年9月11日、現地時間午前でした。アメリカ・ニューヨークの世界貿易センタービルの北と南のタワーに飛行機2機がそれぞれ突っ込み、その数十分後に、別の1機が首都・ワシントン近くの国防総省(通称・ペンタゴン)に激突しました。さらに1機はペンシルベニア州ピッツバーグ近郊に墜落しました。
世界貿易センタービルの二つのタワーは、はげしく燃え上がり、くずれ落ちました。飛行機4機はこの日の朝に乗客として4~5人ずつ乗り込んだ計19人にいずれもハイジャックされていました。犯人をふくめ飛行機の乗客は、全員が亡くなりました。タワーで働いていた人たちや通行人、救助にあたった消防士や警察官も犠牲になりました。ペンタゴンでも職員らが亡くなりました。犠牲者は計2977人に上りました。
ねらわれたのは、アメリカの経済と軍事の力を象徴する建物でした。第二次世界大戦後の世界は、アメリカなどの資本主義の国々(西側)と、ソビエト社会主義共和国連邦などの社会主義の国々(東側)が対立する「東西冷戦」の時代でした。1990年代初めまでに冷戦が終わると、アメリカは経済や軍事の力で抜きんでた超大国になっていました。国の中枢がおそわれたことで、多くのアメリカ人が愛国心を燃え上がらせました。
テロは、ある個人や集団が自分の考えを押し通すために暴力的な手段を使うことです。アメリカ政府は、このテロを起こしたのは国際テロ組織「アルカイダ」で、中心となって企てたのはリーダーのウサマ・ビンラディン容疑者だと発表しました。
当時のブッシュ(子)大統領は「テロとの戦い」を掲げ、仕返しに打って出ます。2001年10月、アメリカはビンラディン容疑者をかくまっていたアフガニスタンのタリバン政権を攻撃し、政権をたおしました。
ブッシュ大統領は、テロを支援する国だとして、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸」と非難。03年には大量破壊兵器の開発を理由にイラクを攻撃し、フセイン政権をたおしました。しかし、大量破壊兵器は見つかりませんでした。
ビンラディン容疑者は1957年、サウジアラビアの裕福な家に生まれました。イスラム原理主義の過激な考えに基づくアルカイダを率いて、パレスチナ問題などでイスラエルを支援するアメリカを憎み、戦いを呼びかけてきました。アメリカのアフガニスタン攻撃後も逃げ続けていましたが、2011年5月にパキスタンの民家でアメリカ軍の特殊部隊に殺害されました。
同時多発テロでは、日本人も24人が亡くなりました。犠牲になった人たちは、ハイジャック犯に乗っ取られた飛行機に乗っていたり、くずれたタワーで働いていたりしました。
2機が突っ込んでくずれ落ちたニューヨークの世界貿易センターに支店があった富士銀行(現・みずほフィナンシャルグループ)では、日本人が12人亡くなりました。タワーの跡地は犠牲者を追悼するための広場になりました。滝が流れ落ちるモニュメントが設けられ、犠牲者たちの名前が刻まれています。毎年9月11日には追悼行事が開かれていて、日本から参加する遺族もいます。
旅行中だった日本人の男子大学生1人が乗っていた飛行機は、乗客たちが抵抗してペンシルベニア州の草地に墜落しました。大統領が仕事をするホワイトハウスや連邦議会議事堂をねらっていたとされます。
テロが起きた直後、アメリカのアーミテージ国務副長官(当時)は、日本に「ショー・ザ・フラッグ(旗を見せよ)」と語ったと報じられました。自衛隊の姿を見せて協力するよう迫ったのです。「テロとの戦い」でアメリカを支持した小泉純一郎・総理大臣(当時)は、自衛隊を送ることを決断。日本政府は「テロ対策特別措置法」を定め、海上自衛隊をインド洋に送り出してアメリカ軍などの艦船への給油活動に取り組みました。
2003年にイラクとの戦争を始めると、さらにアーミテージさんは「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(陸上部隊を送れ)」と日本に貢献を求めました。日本政府は新たに「イラク復興特別措置法」を定め、戦いが行われていない「非戦闘地域」に活動を限って、陸上自衛隊がイラクのサマワで医療や給水などの支援にあたりました。
自衛隊は自分の国を守る実力組織として生まれましたが、1992年に国連平和維持活動(PKO)協力法が定められました。テロとの戦いの時期をへて2015年に安全保障関連法が成立し、国際的な人道支援などについては、特別な法律を定めなくても自衛隊が海外で活動できるようになりました。
アメリカはアフガニスタンでタリバン政権をたおした後も、軍を引き揚げず、民主化や国の立て直しを目指しました。2020年になって、軍の引き揚げを柱とする和平合意をタリバンと結びました。タリバンは21年8月15日に約20年ぶりに首都カブールを制圧。アメリカ軍は8月30日に引き揚げを終え、01年から続いた「アメリカ史上最長の戦争」が幕を閉じました。タリバン政権のもとで女子教育が制限されるなど、時代が逆もどりしたような状況が見受けられます。
イラクでは11年にアメリカ軍が引き揚げましたが、過激派組織「イスラム国」(IS)がイラクとシリアで勢力を広げました。14年からアメリカを中心とした有志国連合軍が作戦を進め、ISの勢いはおとろえました。しかし、その後もISの考えを信じる人によるテロが世界各地で起きています。
「テロとの戦い」の後始末はうまくいかず、混乱は収まりませんでした。今年2月には、アメリカがイスラエルとともに、核兵器の開発を理由にイランを攻撃しました。半年以上にわたって緊張が続き、新たな憎しみを生み出しかねなくなっています。
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