Q 人間はなぜ、他の動物より成長がおそいのでしょうか?(京都府木津川市、小5、衣斐涼香さん)
A 人間特有の「未熟な赤ちゃん」の研究調査にも参加した大阪大学大学院人間科学研究科の西村剛教授に教えてもらいました。
◇ ◇
人間の赤ちゃんは、未熟な状態で生まれます。生まれてから4か月も首がすわっていない状態が続き、自分で立って歩くまでには1年ぐらいかかります。同じ霊長類のニホンザルやチンパンジーは生まれて間もなく母親の体にしがみつくことができます。人間が未熟な状態で生まれる大きな要因は、脳が大きくなったことです。
人間の脳の容量は1200~1400ミリリットルあり、生まれてくる赤ちゃんでも約4分の1の350~400ミリリットルもあります。人間は、直立二足歩行のため、太ももの付け根の幅を広げることはできません。その内側にある赤ちゃんが生まれて出てくる産道のサイズには限界があります。そこで、赤ちゃんは、母親のおなかの中では、必要な数の脳細胞(ニューロン)だけをつくって、脳を小さくするようになりました。さらに、人間は頭より肩幅が大きいので、体の成長をおさえて肩幅をせまくしました。そうしてせまい産道を通れるようにした結果、未熟な赤ちゃんが生まれるようになりました。
生まれたあとは、まず脳の成長を優先させます。電気コードのような軸索がのびて脳細胞同士をつなぎ、軸索を絶縁体のような髄鞘で包んで電気信号がちゃんと届くようになります。軸索は周りの脳細胞へとのびて複雑な神経ネットワークを構築していきます。これにはすごくエネルギーがいるので、体の成長は後回しです。
このようにして12歳ごろに脳が完成し、思春期の2~3年で体が大きくなり、成人へと成長します。一方で、ニホンザルは4歳、チンパンジーは8歳ごろまでには成体になります。人間の成長はとてもおそいと言えるでしょう。
では、未熟な赤ちゃんを産むようになったのは人類の進化のどこまでさかのぼるのでしょうか。私も参加した東京大学の海部陽介教授のグループによる最新の研究からは、ジャワ原人(インドネシアのジャワ島で化石で見つかった人類)が、すでに未熟な赤ちゃんを産み、育てていただろうと考えられます。大人の脳の容量は1000ミリリットルまで大きくなっていました。
未熟な赤ちゃんは自力では動けないので、同じ姿勢で寝るしかありません。その状態が続くと頭の後ろが平らになるなど、寝方によって頭にゆがみができることがあります。脳が大きくなったジャワ原人にも、この特徴があり、100万年前には未熟な赤ちゃんに“進化”していたことが分かったのです。
人間の成長がおそいということは、親や周りの人々からさまざまな刺激を受けて、人それぞれに脳や体の成長に大きな可能性があるということです。脳も体も寝ている間に成長します。小学生のみなさんには、よく食べてよく寝て、いろんな体験や学びをしてほしいと思います。【聞き手・馬渕晶子】
身の回りの素朴な疑問をお待ちしています。〒100-8051(住所はいりません)毎日小学生新聞「疑問氷解」係へはがきを送るか、QRコードの応募フォームから。
Indonesian
English
Hindi
Thai
Vietnamese
Burmese
Spanish
Portuguese
Arabic
Russian
Chinese