1945年8月6日は広島で、9日は長崎でアメリカ軍の爆撃機から原子爆弾(原爆)が落とされ、たくさんの人々が苦しんで亡くなりました。原爆などの核兵器は、人類を滅ぼしかねない「悪魔の兵器」と呼ばれます。どうすればなくせるのでしょうか。核兵器を持つ国々と、受け入れない国々の動きをたどります。【吉富裕倫】
原爆は、人類が造った兵器の中で、最もおそろしい爆弾の一つです。数千度にもなる熱が広範囲に広がり、爆心地に近い人は一瞬で蒸発して死に、または焼けただれて苦しんで死にました。爆風もはげしく、こわれた建物の下じきになり死んだ人もたくさんいました。
さらに爆弾から出された放射線が肌をつらぬいて内臓をおかし、死に至らしめたり、がんの発病をもたらしたりしました。長期間にわたって被爆した人たちを苦しめたのです。
原爆は、ウランやプルトニウムの原子核反応が生み出す巨大なエネルギーを使う核兵器の一種です。最も強力な核兵器は、広島、長崎で落とされた原爆の何万倍もの威力と、何百万倍もの放射線を出すといわれています。軍人も市民も関係なく無差別に殺害するだけでなく、灰やちりが大気中に舞って気候変動をもたらし、農作物が育たず飢餓を招くとの研究報告もあります。「核戦争に勝者はいない」といわれるのは、そのためです。
日本に原爆が落とされて第二次世界大戦が終わると、アメリカとソビエト社会主義共和国連邦(ソ連、いまのロシアなど)の二つの大国が核兵器の開発を競い合うようになりました。ソ連はアメリカに近いカリブ海のキューバという国に核ミサイルを配備しようとし、核戦争の一歩手前といわれたほどの対立「キューバ危機」が1962年に起きました。アメリカとソ連の指導者が話し合って核戦争はさけられました。
周辺の中央・南アメリカ、カリブ地域などの国々は、核兵器国の争いに巻き込まれないように、核兵器の実験、配備や使ったり脅したりすることなどを禁じる非核兵器地帯条約を67年に結びました。その後も核兵器を拒否する国・地域は南太平洋、東南アジア、アフリカ、中央アジア、モンゴルと増え、まだ条約に署名しただけで効力の生じていない国もふくめ世界の116か国・地域(南極や宇宙を除く。国際連合軍縮部調べ)が非核兵器地帯に参加しています。
キューバ危機は、核兵器を持っている国にも核戦争の恐怖を感じさせました。核拡散防止条約(NPT)が1968年に結ばれ、70年に発効(効力を持つこと)しました。NPTでは、核兵器の開発に成功していたアメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国の5か国が、核軍縮を誠実に交渉する義務を受け入れました。その代わり、他の加盟国は核兵器を持たず、発電など原子力の平和利用に専念します。
核兵器を持つ5か国は、国際連合(国連)の安全保障理事会の常任理事国でもあります。世界で191か国・地域(脱退を表明した北朝鮮をふくむ)ものたくさんの国々が加入するNPTは、核軍縮の柱ともいわれます。
しかし、イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮が核兵器を持つようになりました。核兵器国による核軍縮はなかなか進みません。NPTに不満を持つ国々が増えてきました。
戦争では、軍人たちが戦いますが、一定のルールがあります。たえがたい苦痛を負わせるような人の道に反することはしてはいけません。生物兵器(細菌などをまいて病気を広める兵器)や、化学兵器(毒ガスなどをまく兵器)には、製造や保有を禁止する条約があります。
NPTだけでは核兵器をなくせないと考えた国々は、核兵器を全面的に禁止する核兵器禁止条約をつくりました。被爆者の訴えなど、核兵器の非人道性がよりどころになりました。2017年に国連で採択され、21年に効力が生じ、署名だけの国もふくめた参加国は100か国(批准などの手続きを終えた締約国数は75か国)に達しました。
ただ、核兵器を持つ国は入っておらず、核兵器を持つ国に守りを頼っている日本のような国々も入っていません。強い威力のある核兵器には、核兵器を持つ敵からの攻撃を思いとどまらせる力(核抑止力)があるという考え方が根強くあるからです。
核兵器の現状を調べている「アメリカ科学者連盟」は、今年初めの時点で世界9か国が1万2187発の核弾頭を持っていると推計しています。NPTの精神に反し、核兵器を持つ国は今後も持ち続けようとしているとみています。
核軍縮にくわしい長崎大学の西田充教授は「『核兵器をなくせ』と主張して圧力をかけるだけではなかなか核軍縮は進まないので、何のために核兵器を必要としているのかを理解することがまず大事です。自国のことは自国で守らなければならない国際社会の現実からくる、他国への不信感や恐怖心が根本にあります」と話します。
そのうえで、西田教授は「核兵器を持った相手から攻められるかもしれないと不安感を抱くと、自らも核兵器で相手による核攻撃を抑止しようと考えます。簡単なことではありませんが、そうした不信感を取り除き、国同士の交流や対話を深め、核兵器に頼る必要性をなくしていくことが核廃絶には不可欠です」と指摘しました。
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