北京(CNN) 中国の習近平(シーチンピン)国家主席は長年、チベット族やウイグル族などの少数民族に対し、中国人としての意識と中国共産党への忠誠心を持つことを求めてきた。
その圧力がこのほど、新たな法律という形で教育現場や各地域、家庭、さらには国外で違反したとみなされる人々にも及ぶことになった。
「民族団結進歩促進法」と名づけられた法律で、1日から施行された。民族の団結を損なったり、分裂をあおったりする行為を禁止する内容だ。中国では56の民族が公認されているが、人口14億人の9割以上を漢民族が占める。
新法は、学校や政府機関が標準中国語を第一言語とすること、中国人としての「強い共同体意識」を醸成する教育課程を徹底すること、すべての家庭で子どもが中国共産党と中国人を愛するよう導くことを定めている。
中央政府に対しては、中国の歴史と国家繁栄を反映した博物館や図書館の行事を支援するよう促し、地方政府には住宅政策で民族団結を図ることを義務づけた。この条項が住居の移転につながる可能性も指摘されている。
国外の団体や個人が民族の団結を損なったり、民族分裂を生み出したりした場合も責任を問われる。この規定の対象は広範に及び、少数民族の問題をめぐる世界全体の活動や研究、議論に影響を与えることが懸念されている。
習氏は1日、共産党創立105周年を記念する式典での演説で、全党員に「すべての民族の大団結をたゆまず固め、強化する」よう呼びかけ、新法の重要性を強調した。
この法律には、すでに人権団体や専門家から、チベット、ウイグル、モンゴルなど少数民族の文化アイデンティティーを抑圧する恐れがあるとの批判が集まっている。
国連の人権専門家らは4月の書簡で、新法は「チベット、ウイグル、モンゴルを含む民族コミュニティーの言語的、文化的、宗教的自律性に重大な影響を及ぼす恐れがある」と訴えた。
専門家らはまた、新法が外国にも適用される可能性を念頭に、「国境を越えた弾圧」になりかねないとの警告を発した。
一部の観測筋は、少数民族の自治から国家アイデンティティーへとかじを切ったここ数年の中国政策が、仕上げの段階に達したとの見方を示す。この政策転換は、民族の同化に向かう強引な圧力として批判されてきた。
政策転換はまた、習氏の下で国家の安全を確保しようとする全体構想の一部とも解釈されてきた。習氏は2008年のチベット騒乱や新疆ウイグル自治区で起きた暴動の後、12年に実権を握った。
豪メルボルンのラ・トローブ大学で中国の民族政策を研究するジェームズ・ライボルト教授は、新法の制定について「中国政府は『民族団結』をもはや大まかな政治スローガンや局地的な宣伝活動として扱うのでなく、単一の国家アイデンティティーづくりを学校、家庭、メディア、博物館、党幹部、予算、技術プラットフォーム、治安機関の全体が負う責任と位置づけている」との見方を示した。
「メッセージは明確だ。少数民族のアイデンティティーは、党が定めた中国人としてのアイデンティティーに従属する場合のみ認められるということだ」
ライボルト氏はそのうえで、新法が国外の学者やジャーナリスト、活動家、在外中国人コミュニティーや、そのほか中国の国民性、辺境政策を研究、批評する人々に「萎縮効果」をもたらす可能性を指摘した。自己検閲を促したり、移動を制限したり、学術的な議論を狭めたりする恐れがあるという。
中国共産党は近年、宗教団体への監視を強化し、小中学校や幼稚園における民族固有言語の使用を制限してきた。中国政府は新疆ウイグル自治区で多数のイスラム系少数民族を恣意(しい)的に収監するなど、重大な人権侵害を指摘されている。ただし、中国当局はこうした主張を否定している。
中国に対しては、国境を越えた広範な弾圧の指摘もある。スペインを拠点とする人権NGO「セーフガード・ディフェンダーズ」は22年、中国が世界100カ所以上に警察拠点を設けて国外在住の中国人活動家らを監視し、嫌がらせに及んだり帰国を強制したりしていると報告した。中国側はこれも否定してきた。
中国政府は、新法を「全民族の正当な権利と利益」を守る法律と位置づけ、「少数民族による固有言語の使用を妨げるものではない」と主張する。
中国司法省の胡衛列次官は6月29日の記者会見で国外への管轄権について問われ、国家主権の維持に関する国際法上の基本的規範に沿っていると答えた。
同氏はまた、「民族団結は国家の繁栄と発展に不可欠な基盤だ」と述べ、「故意に民族間の緊張をあおり、民族の団結を損ね、国家の安全を危うくする違法な活動は、民族団結の土台を揺るがし、公共の利益や人民の正当な権利と利益を害する」との考えを示した。
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