世の中の出来事を、カメラのレンズを通して見つめる「eye写真で伝えるニュース」を、毎週月曜(一部地域翌日)の3面に掲載します。
大漁旗が風にはためき、太鼓やはやしの音がひびく中、色あざやかな衣装を着た子どもから大人までが歩きました。
岩手県大船渡市綾里地区の天照御祖神社などで6日、5年に1度の式年大祭が行われました。神社のある漁港のまわりには、岩手県内外からたくさんの人が集まりました。
明治時代に作られたみこしのそばで、担ぎ手たちを見守っていたのは、熊谷典昭さん(41)です。この神社は15世紀半ばごろにできたとされ、熊谷さんは22代目の宮司を務めています。
熊谷さんは、高校で地理や歴史、公民を教える先生でもあります。岩手県盛岡市の自宅から、同県二戸市の県立福岡高校まで始発の新幹線で通っています。週末には、自宅から車で約2時間かけて大船渡市に通い、二つの場所で生活を続けています。「両立は大変だが、教師も神職も地域のつながりを育て、社会のために役立つ仕事」と話します。
綾里地区は、明治から令和までの間に、津波や山火事など大きな自然災害を何度も受けました。住民たちは、苦しい思いをしながら日常を取り戻してきました。100年近く続く式年大祭は、災害で弱くなりがちな地域のつながりを強める大切な役割を持ってきました。
2011年の東日本大震災で起きた津波では、綾里地区で27人の死者・行方不明者が出ました。熊谷さんの母シゲミさん(当時56歳)と祖父の敬一さん(当時92歳)は、神社の横の自宅で津波に流され、今も行方がわかっていません。
さらに、25年2月に起きた山火事では、市の約1割にあたる約3400ヘクタールが焼け、1人が亡くなりました。この神社でも、参道や裏山の木が燃え、建物の近くまで火がせまりました。祭りで使うみこしは、地元の人たちといっしょに避難させました。
何度つらいできごとがあっても、熊谷さんに綾里を離れる考えはありません。「神様とは喜びも悲しみも共有することができる。生まれ育った町で、地域の人たちの心のよりどころを守り続けたい」と決意を語りました。<写真・文 西夏生>
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