【6月12日 AFP】ドナルド・トランプ米大統領が、出会った男性たちの肉体を褒めちぎらない週はほとんどない。男性の「筋肉」をべた褒めしたり、アスリートの「丸太のような」太く強靭な脚を称賛したり、総合格闘家をリングに上がるには「イケメン過ぎる」と評したりしている。
こうした発言は、SNSなどでトランプ氏のセクシュアリティ(性の在り方)に関する多くの臆測を呼んでいるが、一部の専門家は、トランプ氏の魅力的な男性への執着を、伝統的な男らしさを重視する思想「マッチョイズム」と結びつけて考えている。
その傾向をさらに象徴しているのが、トランプ氏の80歳の誕生日に合わせ、14日にホワイトハウスの南庭で行われる総合格闘技団体「UFC」の試合だ。総合格闘技は露出度の高い筋肉質の男性たちが激突する特に過酷なスポーツだ。
コーネル大学のサブリナ・カリム教授(政治学)はAFPの取材に対し、「彼(トランプ氏)は、自分自身ではもはや体現することのできない、この美化された男らしさに手を伸ばそうとしているかのようだ」と指摘。
「彼は高齢なので、この(男らしさを失った)喪失感がぬぐえないのだろう」と分析した。
■五輪金メダリストの脚を触り損ねた
先日の沿岸警備隊士官学校の卒業式で、トランプ氏は「すべての体力テストで満点を獲得した唯一の士官候補生」をステージ上に呼び寄せた。
その士官候補生がステージに向かう際、トランプ氏は「彼をじっくり見たい! わお! この男の筋肉を見てみろ!」と述べた。
また、トランプ氏はウィスコンシン州を訪問した際には、ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪のスピードスケート男子1000メートルで金メダルを獲得したジョーダン・ストルツ氏と面会したが、その際にストルツ氏の脚に触り損ねたことを悔やんでいた。
他にも、海軍士官候補生の腕を「鋼鉄のようだ」と称賛したり、アメリカンフットボールのニューヨーク・ジャイアンツに所属するクォーターバック(QB)、ジャクソン・ダート選手を「美しい男」と呼び、「丸太のような脚をしている」と評したりしている。
トランプ氏は外国の指導者たちの品定めもしており、南米パラグアイのサンティアゴ・ペニャ大統領やシリアのアハマド・シャラア暫定大統領の容姿の良さに言及している。
2024年大統領選の選挙運動中には、ゴルフ界のレジェンド、アーノルド・パーマー氏の男性器について、「彼と一緒にシャワーを浴びた他のプロたちは出るなりこう言ったんだ。『オーマイゴッド、信じられないほどすごい』とね」とまくし立て、人々の眉をひそめさせた。
ゲイ雑誌「アドボケート」は最近、「ドナルド・トランプ氏は美しい男性を愛している」と指摘し、トランプ氏の誕生日に開催される総合格闘技の試合は「ホワイトハウスの史上、最も凝った同性愛的なショーになるだろう」と付け加えた。
ブランセン・ゲイツ氏が作成したトランプ氏の男性に関する発言のリップシンクパロディ動画は、100万件以上の「いいね!」を獲得し、拡散されている。
その動画の抜粋では、「私は男女関係なく誰にでもキスをする。あの男を見てみろ、なんてイケメンなんだ。楽しんでいるわけではないが、まあいいだろう」というセリフが流れる。
■強烈な皮肉
トランプ氏は、ヴィレッジ・ピープルの曲「YMCA」で集会を締めくくるのを定番としているが、この曲はゲイの人々への応援歌だった。
アドボケート誌は、米国でゲイ男性は歓迎されないというシグナルをあらゆる方法で送ろうと「精力的に活動」してきたトランプ政権にとって、「この皮肉は非常に強烈だ。なぜなら、多様性・公平性・包括性(DEI)だからだ」と皮肉った。
フェアリーディキンソン大学のダン・カッシーノ教授はAFPの取材に対し、「米国において、大統領選は常に男らしさを競うものだった」と説明。
「トランプ氏はその裏にあった本当の意図を可視化した。こうした鈍感さこそが、彼の強みとなってきた」と述べた。
かつて美人コンテストを主催していたトランプ氏は、女性の容姿にコメントすることでもよく知られており、過去にはイタリアのジョルジャ・メローニ首相を称賛して外交的な波紋を広げたことがある。
また、トランプ氏はホワイトハウス番の女性記者たちの容姿を繰り返し攻撃しており、自身の健康状態に関する記事を書いた米紙ニューヨーク・タイムズの女性記者を「醜い」と侮辱し、CNNの女性キャスターに対しては笑顔がないと酷評した。
カッシーノ教授は、これもトランプ氏による「米国を再び偉大に(MAGA)」戦略の一環であり、2024年大統領選でトランプ氏を支持して大挙して投票所に足を運んだ若い男性たちの支持を集めるためのものだと指摘。
「第一に、女性をおとしめることで、女性が男性のような特性を備えていないことを示す必要がある」「第二に、そうした男らしい特性を備えた男性を強調する必要がある。最も失地回復主義的で退行的な男性たちにとって、総合格闘家は男らしさを示す格好の例だ。つまり、若く、筋肉質で、強く、暴力もいとわない姿勢だ」と付け加えた。
そして、これらはすべてトランプ氏の自己像と結びついているという
カッシーノ教授は、「こうした男性たちは、トランプ氏がSNSに投稿している自身のAI(人工知能)生成画像に似ている」「メッセージは明確だ。『男性とはこういうものであり、だからこそ男性が国を支配すべきだ』ということだ」との見解を示した。(c)AFP
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