ニューヨーク(CNN) 史上最悪級の供給ショックが続く中で、石油市場はなぜ平穏を保ち続けているのか――。それは世界経済で最も大きな謎の一つだ。
ホルムズ海峡は3カ月以上も続く戦争によって麻痺(まひ)状態に陥った。イランとの戦争が始まる前は、ほとんど誰も想像していなかった悪夢のシナリオだ。JPモルガンの推計によると、ホルムズ海峡を通過する確認可能な船舶は依然として極めて少なく、戦争前のわずか15%程度にとどまる。
しかし原油先物価格は、少なくとも現時点では、予測されていたほど危険な水準にまでは急騰していない。
その理由として、驚くほど大量の原油がホルムズ海峡の二重封鎖をすり抜け、世界のエネルギーシステムに対する歴史的な衝撃を緩和しているという説がある。専門家はCNNに対し、そうしたいわゆる「闇航行」を担うタンカーは、船舶自動識別装置を切って探知を免れ、封鎖をすり抜けている可能性があると語った。
JPモルガンの推計によると、闇航行による輸送量は5月後半の2週間で1日あたり約210万バレルに達した。戦争前にホルムズ海峡を通過していた1日あたり1560万バレルに比べれば少ないものの、特筆すべき量ではある。
JPモルガンのナターシャ・カネバ氏は先週の顧客向けレポートで、「海上封鎖が続き、商業輸送量が急減しているにもかかわらず、驚くほどの量の原油と石油製品が今も同海峡を通過しているようだ」と指摘した。
ラピダン・エナジー・グループの創業者、ボブ・マクナリー社長もCNNに対し、闇航行が危機を遅らせたり、多少緩和させたりする役に立っている可能性はあるとの見方を示した。
「ホルムズ海峡の交通量は戦争前の0~10%程度と推定しているが、こうした漏洩(ろうえい)を考慮すると、もう少し多いかもしれない」「だがそれだけでは、原油在庫の大幅な取り崩しを完全に回避することは到底できない。それでも逼迫(ひっぱく)感をいくらか和らげる効果はある」(マクナリー氏)
投資銀行パイパー・サンドラーのジャン・ステュアート氏は、5月にホルムズ海峡を通過した原油の量を1日あたり約290万バレルと推定する。この推定値には、イランに通行料を支払ったと思われる船舶が輸送した約210万バレルが含まれる。
残る約90万バレルは、船舶自動識別装置を切って夜間に海峡を通過した「幽霊」船で輸送された。
「幽霊、つまり闇航行が助けになっている」「私が思っていたよりもずっとうまく、危機が回避されている」とステュアート氏はCNNに語った。
国際的な指標となるブレント原油先物価格は、5日に1バレル93ドルまで下落した。戦争前の70ドル前後を大幅に上回る水準は続いているものの、直近の最高値だった114ドルに比べれば大きく下落した。
しかし、市場が平穏を保っている最大の要因は闇航行ではない。
パイパー・サンドラーによると、ペルシャ湾からはホルムズ海峡以外の経路で1日あたり推定約450万バレルの原油が輸送されている。そのほとんどは、サウジアラビアの油田と紅海に面したヤンブー港を結ぶ東西パイプラインを経由する。
さらに大きな要因として、中国は原油輸入を大幅に削減し、大規模な備蓄の活用に切り替えた。
世界最大級のエネルギー消費国、中国の需要が減ったことは、供給不足の緩和につながった。
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