(CNN) 白人学生が刃物で刺され瀕死(ひんし)の状態にあったにもかかわらず警察に手錠をかけられ、その後死亡した事件を巡り、英国全土で大きな怒りが巻き起こっている。警察官の対応に厳しい批判が向けられる中、極右指導者たちにも非難の声が上がる。この殺害事件を利用して人種差別的な暴力を煽(あお)り、政治的利益を得ようとしているとの見方が出ているためだ。
2日夜、その怒りはイングランド南部の海岸都市サウサンプトンで衝突へと発展した。数百人のデモ参加者が警察署の外に集まり、極右活動家らに煽られた結果、機動隊と衝突。参加者らは煉瓦などを投げつけ、警察官11人が負傷した。
参加者らはまた「ヘンリー、ヘンリー」と連呼した。これは殺害された18歳の白人学生ヘンリー・ノバクさんを指している。ノバクさんは、ビクラム・ディグワ受刑者に刺されて瀕死の状態で横たわっていたにもかかわらず、警察によって手錠をかけられた。23歳のシーク教徒の男であるディグワ受刑者は、自分が人種差別的な襲撃の被害者だと警察に虚偽の申告をしていた。ハンプシャー警察が公開した衝撃的なボディーカメラ映像の中でノバクさんは、「息ができない」「刺された」と警察官に訴えている。これに対し警察官は、「そうは思えない」と答えていた。
ディグワ受刑者は1日に終身刑を言い渡され、この事件の裁判は終結した。しかし極右勢力は事件を利用し、警察を含む英国の制度が白人英国人に対する不当な偏見を持っているとする虚偽の主張の根拠としている。そのような主張は精査に耐えない。政府統計によれば、白人の被告に下される拘禁刑の刑期は平均して他の民族集団よりも短い。また黒人受刑者は他の民族集団と比較して、当初の刑期に対する実際の服役期間の割合が大きい。加えて昨年のロンドンでは黒人、アジア系、混血、その他の民族集団の人々の方が、職務質問や身体検査の対象となりやすかった。
「この悲劇を利用して不満や分断を生み出そうとすることは、どのような状況でも間違っている。遺族もそれについてはっきり反対の声を上げる中、そうした行動に走るのは許しがたい」。英国のスターマー首相は3日にそう述べた。スターマー氏はとりわけ、強硬右派のポピュリスト政党、リフォームUKを率いるナイジェル・ファラージ氏に怒りを向けた。ファラージ氏はこの事件について、国民が「純粋かつ冷徹な怒り」によって反応すべきだと語っていた。
シーク教のコミュニティーの指導者たちはディグワ受刑者の犯罪を非難。一方ノバクさんの父親のマークさんは1日、裁判所の外で、息子の死が「さらなる分断や憎悪、緊張を生み出すために利用されてほしくない」と述べていた。
マークさんは警察による息子への対応を「衝撃的」だと明言しつつ、政府に対して「刃物による犯罪を国家的緊急事態として扱う」よう求めた。
英PAメディア通信によると、マークさんはシーク教や人種差別といった事柄とは無関係に「21センチの刃物を持った人間が英国の街を公然と歩き回れるようであってはならない」と主張した。
金融学を学ぶ大学1年生だったノバクさんは2025年12月3日、夜間に友人たちと外出した後の帰宅途中で殺害された。地元警察の発表によると、ディグワ受刑者はノバクさんを5回刺し、胸の傷による大量の内出血を引き起こした。
その後ディグワ受刑者は、警察が公開したボディーカメラ映像の中で、ノバクさんが自分のターバンをつかみ、人種差別的な暴言を浴びせたと主張した。ノバクさんは現場で死亡した。警察の発表が付け加えたところによると、司法解剖医はたとえ警察官がノバクさんに手錠をかけていなかったとしても命を救うことはできなかったと結論づけた。
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