花火の製造や大会企画を手がける滋賀県の会社と龍谷大学が、火薬を包む外殻(玉皮)が短時間で水に溶けて自然に返る花火を約8年かけて共同開発しました。打ち上げ花火は、夜空を美しく彩る一方、地上に燃えかすなどが落ちる問題があり、開発した花火で環境への影響を軽減することが期待されています。【長谷川隆広】
滋賀県長浜市の「柿木花火工業」の柿木博幸社長は自身が携わる琵琶湖での花火大会で、打ち上げ後に湖岸に浮いている花火の残骸に胸を痛めてきました。
ごみを減らそうと、完全燃焼して燃えかすがほとんど出ない割火薬(爆薬)を開発するなど対策をしてきました。しかし、玉皮部分は爆発で吹き飛ばされ、燃えずに落下するため、残骸としてごみになることは避けられませんでした。
そこで、柿木社長は水溶性(水に溶ける性質)かつ生分解性(微生物の働きで二酸化炭素と水に分解される性質)の樹脂を玉皮に使うことを思いつきます。
2018年に滋賀県中小企業団体中央会から紹介を受け、龍谷大学の中沖隆彦教授(高分子化学)と共同研究を進めることになりました。
玉皮に使用する樹脂を選ぶために化学メーカーが作った複数の樹脂がそれぞれ、どのように分解するかを試験したり、火薬をしっかり包んだ上で破裂後は細かく割れるように樹脂の厚さを検討したりと、学生の協力も得て地道な研究を繰り返しました。条件に合う樹脂として、最終的に大手化学メーカー「クラレ」の製品を選びました。
開発途中には樹脂の粘着力が強すぎて、成形加工機にこびりつく問題も起きましたが、剥離剤(はがすための薬剤)などを工夫して解決しました。玉皮に最適な樹脂のめどが立つと、秋田県大仙市に工場を持つプラスチック成形業「セーコン」(神奈川県横浜市)に加工を依頼。ここでは、花火の大きさや玉皮の強度などのバランスを試行錯誤した末、完成にこぎつけました。
本来、玉皮はクラフト紙で作られるため、分解には長い時間を必要とします。水溶性樹脂を玉皮に使えば、クラフト紙の使用を3割ほど減らすことができるといいます。
開発した玉皮は海や湖、川などに落ちると翌朝には大部分が水に溶けてなくなり、地上に落ちても雨が降れば液状化して流れます。柿木社長が実験で玉皮を事務所の屋根に置いてみたところ、雨が降ると分解し、晴れると分解が止まりました。雨が本降りになると、全て分解してなくなりました。
使用する樹脂は農業用にも使われるもので、田畑に落ちた場合でも作物の生育に影響はないといいます。
柿木社長は「既に北海道の洞爺湖でこの花火を使っていて、沖縄の白い砂浜の上で打ち上げる構想もある。今後は海外輸出も視野に事業を進めていきたい」と話しています。
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