100年前にドイツから海辺の町にやってきたグランドピアノがぴかぴかに修復されました。住民たちのお金で当時の尋常高等小学校に寄付されてから、子どもの歌声と歳月を重ね、卒業生らが保存と修復に走り回りました。おひろめされたホテルのロビーは100人あまりの住民らでうまり、「100歳ピアノ」の新たな門出をお祝いしました。【浜本年弘】
白い砂浜が続く兵庫県豊岡市の竹野浜にある「奥城崎シーサイドホテル」のロビー。漆黒のピアノから、旧市立竹野小学校(2025年3月に閉校)の校歌の伴奏がまろやかな音色で響きわたると、笑みが広がりました。
ピアノの銘板には、「1922」という製造年とともに「ローゼンクランツ」と記されています。ドイツ・ドレスデンにかつてあったピアノメーカーです。創業は世界最高峰のピアノメーカーとして知られるスタインウェイ&サンズ社よりも古いそうです。
ピアノは大正時代末期の1926年、当時の竹野尋常高等小学校の校長が住民に寄付を募り、ドイツから直輸入されました。竹野小で使われ続けましたが、2000年代にピアノが更新されることになり、地元自治会の会館へ移され、発表会などで活躍しました。
その会館も老朽化で取りこわしが決まり、元教職員や自治会役員ら有志は「まだまだ多くの方にふれてほしい」と新たな場所を探します。引き受けたのが奥城崎シーサイドホテルでした。竹野小で学んだ社長の岩井祐介さん(39)は、24年2月にはロビーで住民向けに移転のおひろめ演奏会も開きました。
しかし、ピアノは上部の響板がひび割れ、鍵盤や弦も傷みが目立つようになっていました。楽器店の田中音友堂(本店・豊岡市)を通じて調べると、修復にはおよそ500万円以上かかることが分かりました。
岩井さんらはクラウドファンディング(CF、インターネット上でお金を募ること)など、手立てを尽くして費用を確保しました。島根県松江市にあるピアノ修理専門の会社で25年8月から部品の交換、修復が進められました。最後はスタインウェイを専門に手がける調律師が仕上げました。
4月26日のおひろめでは、竹野小の卒業生や子どもたちの手で真っ白な布がとられ、鏡面のような漆黒でよみがえったピアノが現れると、拍手がわきました。ピアニストらが次々に登場。伸びやかな音色でジャズやタンゴがロビーいっぱいに響きました。
閉校した竹野小とともに、統合後の小中一貫校、竹野学園の校歌斉唱もありました。子どもたちの歌声といっしょに奏でられました。
小学生のころ、このピアノを囲んで歌った竹野浜自治会長の與田政則さん(72)は「手探りで進んだ保存、修復だった。きれいになって夢のようだ。地元、竹野の宝として次の100年へ向かってほしい」と声をつまらせました。
岩井さんも期待を込めます。「ピアノは子どもたちの歌声に長年寄りそってきた。山、里、海へ流れる竹野川のように人々をつなぎ、気品ある音色から新たな交流が生まれれば素晴らしい」
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