皆さん、こんにちは! 佐木理人です。全く目が見えない52歳のおじさんです。
私は大阪市内で妻と二人で暮らしています。23歳の長女は働いていて、21歳の次女は今月、大学院に入りました。
私は、毎日新聞が週に1回発行している「点字毎日」で記者をしています。白いつえを手に、1人で全国各地に取材に出かけています。取材先では、点字の電子手帳でメモを取ります。原稿は、パソコンの画面を音声で読み上げてくれるソフトを使って書いています。この原稿もそうして作りました。
ところで、皆さんは毎日、どこで誰とどんなあいさつをしますか? 授業が始まる時はクラスメートと声を合わせて、大きな声であいさつしているのでしょうか。
私が朝一番にあいさつするのは妻です。「おはよう」の言葉に返ってくる声色や大きさで妻の体調や気分が伝わってきます。自宅のマンションでは、廊下やエレベーターの中などで近所の人と会うと、必ずあいさつします。あいさつしたのが、荷物を届けに来てくれる宅配の人の時もあり、ちょっとしたおしゃべりが始まることもあるんです。
駅に向かう途中、小学校につながる道を横切る所では、登校中の子どもたちを見守っているおじさんに「おはようございます」と声をかけます。すると、おじさんは、子どもたちの列が途切れた時に「今、通れますよ」と教えてくれます。そして「行ってらっしゃい!」と見送ってくれます。「よし、今日も頑張ろう!」と力が湧いてきます。
近所をひとりで歩いていると、知り合いから声をかけられます。その時に「○○です」と名前を言ってもらえると、誰なのかがわかり安心します。
私が知らない人にあいさつするようになったのは、目が少し見えていた小学生の時からです。バスと地下鉄を使って1時間近くかけて学校に通っていました。駅の改札で駅員の人に定期券を見せながら「おはようございます!」「さようなら!」とできるだけ大きな声であいさつしていました。駅員の人から「おはよう」「気を付けて帰ってね」などと優しい言葉が返ってくると、うれしくなり、長い通学時間が苦になりませんでした。
新年度に入りました。皆さんの中には、これまでとは違う生活が始まった人もいるのではないでしょうか。いろいろなことが変わって、不安を感じている人もいるでしょう。そんな時は、誰かに大きな声で元気よくあいさつしてみてください。返ってくる言葉で元気を取り戻せるかもしれません。
もし、街の中で目が見えない、見えにくい知り合いの人に会ったら、自分の名前を言ってからはっきりした声であいさつしてみてください。きっと喜んでもらえると思います。
◆コラム
仕事で初めて会った人にあいさつする時に手渡すのが名刺です。点字毎日の記者の名刺には、視覚に障害のある人が指で読む文字「点字」が付いています。点字を読む人の取材が多いからです。名刺は小さな紙なので、目で見て読む文字で書かれている内容全ては点字では入りきれません。何を点字にするか悩ましいです。私は、連絡してきてもらう時に役に立つように、自分の名前と会社名、電話番号を点字にしています。
1973年生まれ、大阪府出身。生まれた時から目が見えにくく、中学生の時にほとんど見えなくなる。神戸市外国語大学大学院外国語学研究科(英語学専攻)を修了。2005年に毎日新聞社に入社。趣味は食べることとアニメ観賞。
「あなたらしく」では、さまざまな人を理解し尊重するとともに、自分自身も大切にできるような視点を伝えます。タイトルは、ダウン症のある鈴木俊太朗さんが描きました。
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