2月にあった衆議院議員選挙(総選挙)では、目が見えない、見えにくい有権者もそれぞれに見え方に応じた方法で投票しました。私は成人して投票できるようになって以来、点字で候補者や政党の名前を書く「点字投票」をしています。
投開票日の8日、自宅近くの小学校へ出かけると、1票を投じようと地域の人たちが次々と訪れていました。教室の一部屋が投票所です。
受付の担当者に、事前に届いていた入場券を渡し、選挙人名簿を確認してもらって、投票用紙の引換券を受け取りました。私は「点字で投票したいです」と伝え、投票所内の誘導を頼みました。自分の意思が直接書ける点字投票は、ほかの人に見られずに投票できて秘密が守られ、「1票を投じた」という実感も持てるのがいいところです。
まずは「小選挙区」から。引換券と交換に、点字投票用の用紙と点字器を受け取りました。私の住む自治体ではすべての投票所に準備しているそうです。点字用の投票用紙は、一般の用紙と色合いなど見た目は同じですが、厚手の紙が使われます。表面に点字で「しゅーいん しょーせんきょく」と記されていました。目で見ても判別できるように選挙名とともに「点字投票」とも印刷されています。
多くの有権者は、ついたてが付いた組み立て式の「記載台」で投票内容を書きますが、私は点字が書きやすいように別に設けられた長机と椅子に案内されました。候補者の名前は点訳された名簿で確認できます。点字を書く道具である「点筆」などを使って、点字を打ち終えると、職員に声をかけました。投票箱へ案内してもらい、1票を投じました。
政党を選ぶ「比例代表」の投票用紙にも点字が印刷されていました。同時に複数の投票をする場合、点字の表示があると、渡された投票用紙が正しいかどうか、自分でも確かめられます。点字の名簿で政党名を確認して比例代表の用紙に書き、再び投票箱へ誘導してもらいました。
最高裁判所の裁判官を審査する「国民審査」も行いました。約15分かけて3種類の投票を終えました。開票所で投票用紙は計数機にかけられますが、点字の投票用紙は読み取れないので、点字が読める自治体職員たちが手作業で分類し、内容を確認します。
「代理投票」という制度もあります。視覚障害者のほか、体が不自由だったり、けがや高齢などで文字を書くことが難しい人が、投票所で申し出ると利用できます。投票は必要に応じて職員がサポートし、投票する本人が投票箱へ票を投じます。
鉛筆を使って自分で書く視覚障害者のために、「投票補助具」を用意する自治体も増えています。決まった場所に文字が書けるよう、記入欄の部分をくりぬいた2枚重ねのシートに、投票用紙を挟み込んで使います。
このほかに郵便で投票できる制度もありますが、点字投票はできず、利用できる人も限られるなど、課題があります。
私たちが政治に意思を表明できる大切な1票ですが、誰にとっても「投票する権利」が守られ、参加しやすい仕組みに改善されていくことが望まれます。誰もが参加しやすいルールや仕組みを作るにはどうすればよいでしょうか。周りの大人にも聞いて、みなさんも考えてみてください。
◆コラム
点字投票は、視覚障害者自身が声を上げ続けたことが後押しになり、1925年の普通選挙法の改正で公式に認められました。当時国民に等しく選挙権を認めることを求めた普通選挙運動の要求の一つとして、国を動かしたのです。
翌年には地方議会の選挙にも適用され、同年の静岡県浜松市議選が初の公式な点字投票となりました。全国規模では28年の衆議院議員選挙が初めてでした。
1993年生まれ、長野県出身。生まれつき目が見えにくく、5歳ごろ、ほとんど見えなくなった。関西学院大学大学院で社会学を専攻。2024年に毎日新聞社に入社。入社後に始めたランニングが趣味。週1回、仕事の後に、目が見える同僚のガイドで走っている。
「あなたらしく」では、さまざまな人を理解し尊重するとともに、自分自身も大切にできるような視点を伝えます。タイトルは、ダウン症のある鈴木俊太朗さんが描きました。
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