(CNN) 米国とイスラエルによる最初のイラン攻撃から24時間のうちに、周辺海域を航行していた船のナビゲーションシステムは大混乱に陥った。船の現在地が空港や原子力発電所、イランの陸地などと誤って表示された。
この混乱を引き起こしたのは、衛星測位システムからの信号を妨害する「ジャミング」、偽装する「スプーフィング」という攻撃。ドローンやミサイルの進路を阻むため、紛争地帯のあらゆる勢力が使う手段だ。軍や武装集団が意図的に、ナビゲーション装置と同じ周波数帯の強力な電波信号を放つ。ジャミングでは衛星位置情報が途絶え、スプーフィングではナビゲーションシステムが誤った位置を示し始める。
商船が標的になっているわけではないが、海事情報会社「ウィンドワード」のデータによると、2月28日にはアラブ首長国連邦(UAE)とカタール、オマーン、イランの領海で計1100隻を超える船のナビゲーションシステムが不通になった。
ホルムズ海峡を通過する海上交通の速度も低下した。ここは世界の原油、ガス輸出の約20%が通る重要ルートで、混雑が激しく、正確なナビゲーションが欠かせない。その後、船舶が攻撃を受けたり保険会社が海上保険の補償を打ち切ったりしたため、通航はほぼ停止した。
ウィンドワードで海事情報を扱う上級アナリスト、ミシェル・ウィース・ボックマン氏は「中東湾岸地域に現在みられるのは、海上でのナビゲーションにとって極めて危険な事態だ」と述べた。同社によると、電波干渉を受けてやむなく航路を変更したタンカーもある。また、一部のタンカーは船の位置や速度、旋回率などの重要情報を自動的に送信する船舶自動識別装置(AIS)のスイッチを切り、信号が検知されない「闇」状態に入った。
ボックマン氏は「船がどこにあるのか分からない。AISの肝心な目的は衝突の回避なのに」と指摘した。「船が陸に放り出されたり、何千カイリも離れたはるか海上に表示されたりする事態は非常に気がかりであり、危険だ」
ボックマン氏が示したウィンドワードの分析によると、イラン開戦後の24時間にこの海域でAISが妨害されていたのは21の船舶群。この数字が翌日には38に急増した。海事情報分析会社「ロイズ・リスト・インテリジェンス」による開戦から今月3日までのデータでは、655隻の船に対する各3~4時間の全地球測位システム(GPS)妨害が合計1735件記録された。1日の発生件数は開戦時の350件から、2日には672件に増えた。
この戦術がますます使われるようになれば、その影響は戦域外にも広く及ぶおそれがあると、専門家らは懸念する。
衛星測位システム(GNSS)の信号を狙ったジャミングやスプーフィングは、今に始まったことではない。ロシアによるウクライナ侵攻が22年に始まり、ドローンが初めて戦闘に広く送り込まれて以来、船舶や航空機にとって電波妨害は大きな問題になった。
ボックマン氏はこれをバルト海や黒海、中東の一部など特定の紛争周辺地域にはびこる慢性的な問題と呼び、これらの地域では公然とした敵対行為とは異なる「グレーゾーン攻撃」が常態化していると述べた。
英ロンドンの王立航海研究所を率いるラムジー・ファラガー氏もこれに同意し、GNSS信号のジャミングやスプーフィングはドローン攻撃から身を守る「簡単で単純な盾」だと述べた。しかしその結果として生じる電子の霧が、紛争にかかわっていない民間船のナビゲーションシステムを混乱させる。
「民間船が依存する宇宙からの信号がジャミング、スプーフィングに弱いことは何十年も前から分かっていた。ただ、これほど重大な問題ではなかっただけだ」と、ファラガー氏は語る。同氏は1月、GNSSへの妨害が海上の安全に及ぼす影響に関する報告書の執筆に参加した。
「小型のGPS誘導ドローンは昔に比べ、例えば20年前と比べてはるかに広く使われるようになった。今では戦闘につきものだ」と、ファラガー氏は指摘する。
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