(CNN) ウクライナのゼレンスキー大統領はこのところ、戦場でのロシアの死者数を強調している。新たに就任した国防相に対しては、ロシア兵の殺害を最優先課題とするよう要求した。
ゼレンスキー氏によると、昨年12月だけで3万5000人を超えるロシア兵が死亡、または重傷を負った。これをさらに引き上げ、月5万人を目標にすべきというのがゼレンスキー氏の主張だ。
「戦争の代償をロシアが耐えられないものとし、力による和平を強いる」――。フェドロウ新国防相は就任後初の記者会見で、ゼレンスキー氏からそんな任務を課されたことを明らかにした。
ロシアが甚大な損失を被っているという見方自体は、新しいものではない。先週公表された新たな報告書では、4年近く前にウクライナへの全面侵攻が始まって以降、ロシア側の死傷者数や行方不明者数は120万人に上るとの推計を示した。主要な軍事大国では第2次世界大戦後、類を見ない犠牲の規模だ。ウクライナ側の死傷者数と行方不明者数については50万〜60万人と見積もっている。
報告書の著者らは「データからは、ロシアが勝っているとは到底言いがたい」とも指摘した。
確かにそうかもしれない。ただ、ウクライナとロシア、米国の高官による次回の直接協議がアラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビで4日に予定される中、ウクライナの支持者が浮かれるのは間違いだろう。
ウクライナの元高官はCNNに対して、「ロシア側の膨大な死者数を強調しているのは、消耗戦がウクライナの主要戦略になっていることの表れだ。しかし、戦況をさらに好転させるためには、それ以上の戦略が必要になる」と語った。
ただ、メディアの見出しに踊る数字に注目することで、ロシアとの「和平」交渉の一環でドネツクを手放す気はない、というウクライナの考えを理解する重要な手がかりにはなる。
ウクライナ政府の立場はシンプルだ。ウクライナでは、ロシアのプーチン大統領にウクライナの完全支配以外の目標があるとの見方をする人はほとんどいない。このため、何十万人ものロシア兵を殺害できる見込みがあるのに、ロシアが武力によるドネツク奪取を試み続ける中でなぜむざむざ領土を明け渡すのか、という発想になる。
ウクライナ軍は依然、厳重な防御が敷かれたクラマトルスクやスラビャンスクなど、東部地域の約2割を保持する。米シンクタンク戦争研究所(ISW)の最新の推計では、ロシアが全域を掌握するまであと1年半かかる可能性もある。
こうしたロシア兵を殺害しない限り、彼らは占領地に残り、ロシア政府が何か口実を作り次第、すぐにでも有利な立場から戦争を再開する準備を整えるだろう――。それがウクライナ側の理屈だ。
ウクライナでは、この先プーチン氏が領土の要求を取り下げると考える人はほとんどいない。大半の人はすでに、トランプ米大統領がプーチン氏に心変わりを迫る圧力をかけるという期待も失っている。
ウクライナの元高官は「政府は誠実に交渉しているが、多くの人はこのプロセスそのものが米政権の支援を確保するために行われていると見ている」と語った。
「国民は交渉のプロセスに対して極めて懐疑的だ」
しかし、交渉が進展する確信を持てないのであれば、戦場におけるウクライナの戦略はどのようなものになるのだろうか? この先、ロシアの死者数を積み上げることが最善の策なのだろうか?
外国人義勇兵の部隊「チョーズン・カンパニー」を率いた経験を持つ米国人元戦闘員、ライアン・オリアリー氏はそうではないとの考えだ。オリアリー氏がSNSへの投稿で持論を展開すると、激しい議論が巻き起こった。
オリアリー氏が問題視したのは、ウクライナの部隊がロシア兵を殺害したり、装備を破壊したりするたびにポイントが加算される有名な「eポイント」制度だ。獲得したポイントは新たな装備と交換でき、ウクライナ国防省の説明では、将来の計画立案に役立つ豊富なデータをもたらしているとされる。
しかしオリアリー氏は、この制度が誤ったインセンティブを与え、ウクライナ軍の指揮官はロシアの兵站(へいたん)に対する困難だが重要度の高い縦深攻撃――たとえば、車両や通信拠点、後方の陣地で活動するロシア軍のドローン要員への攻撃――よりも、前線周辺の歩兵を狙った比較的単純なドローン攻撃を優先するようになっているとの見方を示唆した。
オリアリー氏はX(旧ツイッター)で「ドローン戦で重要なのは、誰がより多くの兵士を1日に倒したかではない。戦争の帰趨(きすう)を決するのは作戦の縦深だ。敵が前線の後方10~40キロの位置で恐怖なしに燃料や弾薬、ドローン、人員、修理車両を動かせるなら、塹壕(ざんごう)で5倍の犠牲を出しても、縦深を保持していることになる」と記した。
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