ニューヨーク(CNN) トランプ米大統領は、金利の劇的な低下、株式市場の活況、そしておそらく何よりも、自らが指名した連邦準備制度理事会(FRB)議長の退任を望んでいる。
しかし、トランプ政権のパウエル議長に対する前例のない刑事捜査は、これらの成果のいずれも勝ち取れないかもしれない。
実際、トランプ氏とパウエル氏の間で長く続く確執の衝撃的な激化は、逆効果に終わる可能性がある。利下げを遅らせ、ウォール街の不安をあおり、パウエル氏に5月の任期満了後もしばらく留任しようと思わせる可能性もある。
司法省がパウエル氏に刑事訴追をちらつかせていることで、トランプ氏が自身に忠実な人物をパウエル氏の後継者に据えることが一段と難しくなる可能性もある。
「これは最悪の法的措置だ」。ダラス連銀の総裁を務めたリチャード・フィッシャー氏は12日のCNNとの電話インタビューでそう語った。「彼らがここまで低レベルなまねをするとは信じがたい。行き過ぎだ」
フィッシャー氏は、トランプ氏が刑事捜査を通じて何を達成しようとしているのか「報復以外に」思いつかないと述べた。
多くの点で、一線を越えたと言える。
投資家や経営者を動揺させないため、トランプ政権はこれまでパウエル氏を直接攻撃することはせず、公式声明で侮辱するというやり方を取ってきた。
投資家は劇的なエスカレーションにすぐさま不満を表明し、トランプ氏の歴史的な関税引き上げへの対応として昨年春に始めた「米国売り」を一時的に再開した。
米国株と米ドルは12日午前、小幅ながら下落した。
より明確な反応は貴金属市場で起きた。金は3%上昇し、1オンス4600ドルを超える史上最高値を更新。1979年のインフレ懸念以来の高値を更新したばかりの銀は12日、さらに8%急騰した。
エコノミストらはCNNに対し、パウエル氏に対する司法省の刑事捜査が、政治の干渉から切り離されるよう意図されたFRBの独立性を直接狙ったものではないかとの懸念を示した。
ミシガン大学の経済学教授、ジャスティン・ウォルファーズ氏はCNNに対し、「金融政策の実施を犯罪化しようとするのは許しがたい。すべての米国民がこれに反対すべきだ。経済・政治・法の支配・市場に悪影響をもたらす」と断じた。
サンフランシスコ連銀の元職員、ティム・マヘディ氏は、トランプ氏が自身の望む低金利に同調しない現職および将来のFRB職員にメッセージを送ろうとしていると指摘する。
マヘディ氏は、「トランプ氏はこの勝負に勝てない」との見方を示した。「パウエル氏は振り回されるような人物ではない。1月に利下げをすることはないだろう」
この動きにベッセント財務長官も憤り、パウエル氏の訴追決定に不満を表明したと事情に詳しい関係者がCNNに明かした。ベッセント氏は、この決定が市場に悪影響を与えることに懸念を示したという。これはかつてトランプ氏にパウエル氏の解任がもたらしうる影響を警告したことと重なる。
実際、CMEフェドウォッチツールによると、市場は1月下旬の次回会合でFRBが利下げする可能性をわずか5%とみている。これは11日の4.4%とほぼ変わらず、1週間前の17%からは低下している。
「これは常軌を逸した行為であり、他のどの大統領が行ったとしても衝撃的なものだ」と、FRB元副議長のアラン・ブラインダー氏はCNNへのメールで述べた。「だが幸いなことに、FRBとパウエル議長が簡単に屈することはない」
FRBの観測筋はトランプ氏のFRBへの攻撃について、利下げに中立な当局者らに、トランプ氏の意向に従っていると見られたくないと思わせる可能性があると指摘している。
「総じてこれは大統領の政策にとって逆効果であり、連邦公開市場委員会(FOMC)は政治的圧力を回避するべくより強硬な姿勢を取らざるを得なくなるだろう」(マヘディ氏)
歴代のFRB議長経験者のほか、財務長官経験者およびホワイトハウスのエコノミストらによる超党派グループは12日、パウエル氏を「検察による攻撃を用いてFRBの独立性を損なう前例のない試み」から擁護する声明を発表した。エコノミストらはこの攻撃を新興市場で起きている事象になぞらえた。
ホワイトハウスは、トランプ氏を司法省の捜査から遠ざけようとしている。
ホワイトハウスのレビット報道官は12日、記者団に対し、トランプ氏が司法省に対しパウエル氏の捜査を指示したことは一度もないと主張した。トランプ氏はパウエル氏を「ばか者」などと揶揄(やゆ)してきた。
パウエル氏解任の動きは、逆の結果をもたらすかもしれない。
パウエル氏の議長としての任期は5月に満了するが、強力な権限を持つ理事会での任期は2028年1月まで続くため、理論上はFRBに何年も留任することもありうる。
パウエル氏は留任について慎重な姿勢を崩していないため、トランプ氏は理事を交替させることができず、FRBの独立性を支持する声が強く残る可能性がある。
12月にCNNがこの考えについて質問すると、パウエル氏は「議長としての残りの任期に集中している。そのことについて新たに伝えることは何もない」と答えた。
しかし予測市場プラットフォーム、カルシで賭けをする人々が先週時点でパウエル氏が8月までにFRB理事を退任する確率を85%とみていたことは注目に値する。刑事捜査の報道を受けて現在、この確率は55%に急落している。
ただし言い換えれば、市場はパウエル氏が留任する可能性のほうが高いと考えているということだ。これはまさにトランプ氏の望みとは正反対だ。
「これは実に賢明ではなく、間抜けな動きに映る」と、中道右派シンクタンクAAFのダグラス・ホルツイーキン代表は述べた。「本当に愚かだ」
トランプ氏は間もなくパウエル氏の後任指名を発表する可能性があり、有力候補にはウォーシュ元FRB理事やハセット国家経済会議委員長などがいる。
しかし、後任は上院の承認が必要だ。パウエル氏の捜査はすでにその手続きを著しく複雑にしているようだ。
パウエル氏が11日夜に捜査に反論する動画声明を発表した数分後、共和党のトム・ティリス上院議員はX(旧ツイッター)で、今回の召喚によってトランプ政権の当局者が「FRBの独立性を終わらせようと積極的に動いている」という「くすぶる疑念」は払拭(ふっしょく)されるはずだと述べた。
パウエル氏の後任指名を審議する上院銀行委員会に所属するティリス氏は、パウエル氏の法的問題が解決するまで「FRB議長の空席を含む、いかなるFRB指名についても」承認に反対すると宣言した。
リーサ・マーカウスキー上院議員(アラスカ州選出・共和党)は12日、ティリス氏の行動を支持。トランプ政権の行動は「威圧の試みに過ぎない」と非難した。
他の共和党議員もこれに追随すれば、パウエル氏の後任指名承認に向けたトランプ氏の取り組みは鈍るか、頓挫さえしかねない。
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本稿はCNNのマット・イーガン記者による分析記事です。
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