(CNN) 米国系の会員制大型量販店コストコが11月28日にトランプ政権を提訴した。関税政策に関して政権との衝突を避ける大多数の米国企業とは異なる行動を見せた形だ。同社はトランプ政権が権限を逸脱して広範な関税を課したとの主張にもとづき、最高裁が最終的に関税を無効と判断した場合の返金を求めている。
先月最高裁で審理が開始されたこの訴訟は、トランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠として関税を課す法的権限を有していたかどうかを巡るもの。トランプ氏はこの権限を行使し、インドやブラジルなどの主要貿易相手国に50%、中国に至っては145%もの関税を課した。税関・国境警備局(CBP)の統計によると、これらの関税により、米国の輸入業者は9月末時点で総額900億ドル(約14兆円)の損失を被っている。
最高裁がトランプ氏に関税を課す権限はなかったと判断した場合、最高裁でトランプ政権を訴えている中小企業5社以外に、誰が還付を受ける資格があり、その手続きはどのように行われるのかという疑問が浮上する。バレット判事が先月の口頭弁論で指摘したように、還付手続きは「混乱」を招く可能性がある。
還付の可能性を見越して多くの企業は関税支払いの確定期限の延期をCBPに非公式に要請している。関税法が複雑なため、手続きが完了するまでには数カ月を要する可能性がある。関税支払いの確定を阻止すれば、実質的に還付を受けやすくなる。
では、なぜコストコは他企業とは異なる、より強硬なアプローチを取ったのか。同社の動きは政権の政策と明らかに相反する。
コストコの弁護士は国際貿易裁判所に提出した訴状の中で、最高裁が政権に不利な判断を下したとしても、同社は多くの輸入業者と同様、自動的に返金が保証されるわけではないと述べている。
さらに、訴状によると、CBPはコストコが求めた関税支払いの確定に関する複数の要請を却下したという。
先月のトゥルース・ソーシャルへの投稿でこの訴訟について「我が国の生死を分ける」と評したトランプ氏は、いざとなれば、企業が返金を受けにくくする措置を講じる可能性もある。
「トランプ大統領の合法的な関税を支持しないことによる経済的影響は甚大であり、今回の訴訟はその事実を浮き彫りにしている」と、ホワイトハウスのデサイ報道官はCNNへの声明で述べた。
ジョージタウン大学外交学部で貿易政策と貿易法を研究するマーク・ブッシュ教授は、こうした状況によってコストコは、たとえ政権から目を付けられることになったとしても力を尽くしていると述べた。
ブッシュ氏は「企業が払い戻しを受けるためのわずらわしさや政府がそのための体系的な手続きを整備するといった問題に最高裁が言及することさえ、彼らはまったく信じていない」と指摘。より多くの企業がコストコのあとに続くとの確信を示している。
コストコは訴訟の中で、争点となっている関税が同社にどれだけの損害を与えたかについて明らかにしていない。
強い語調とトランプ関税に対する暗黙の批判によって、コストコはホワイトハウスから批判の矛先を向けられかねない。同社は関税が「市場が反応して乱高下する中で乱雑に課された」と主張している。
アマゾンは、一部商品の価格に関税の影響額を表示する計画だと報じられ、このことを痛感した。ホワイトハウスのレビット報道官はこの動きを「敵対的かつ政治的な行為」と非難。同社の株価は下落した。激怒したトランプ氏から電話を受けたアマゾン創業者ジェフ・ベゾス氏は、関税関連の値上げを表示しないと釈明した。
これ以降、アマゾンをはじめとする小売り大手は、同様の対立を招きかねない行動をおおむね避けてきた。こうした企業群は、少なくとも数千万ドルが関税訴訟の結果にかかっているにもかかわらず、その行方をただ傍観するのみだ。
しかし、傍観には代償も伴う。
コストコはトランプ政権を提訴しなければ、「関税が違法と判断されても、資金を取り戻せない状況に陥りうる」。そう指摘するのは、人工知能(AI)を活用した貿易コンプライアンスプラットフォーム、ガイア・ダイナミクスの最高経営責任者(CEO)、エミル・ステファヌティ氏だ。
「コストコのような規模の企業にとって、それは非常に高額で回収不能に陥る可能性のある費用の負担を意味する可能性がある」(ステファヌティ氏)
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本稿はエリザベス・バックウォルド記者による分析記事です。
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