(CNN) テレビドラマで何度も警官役を演じたベテラン俳優が、本物の警官になるために警察学校で訓練を受けている。
自分より何十歳も若い新入隊員に交じってウェイトトレーニングや腕立て伏せ、ランニングなどのトレーニングに励んでいるのは、40年以上のキャリアを通じて「デクスター」「エイリアス」「NYPDブルー」などのドラマで警官を演じていたジェリー・オドネルさん(65)。
引退のことを考え始める年齢で新しいキャリアを目指そうと思ったきっかけは、壊滅的な被害を出した2024年のハリケーン「ヘリーン」だった。ヘリーンがノースカロライナ州アッシュビルを直撃したのは、オドネルさんと妻が引退のためロサンゼルスから同地へ転居したわずか数年後だった。
オドネルさんはこの時、住民が結束して近隣の住民に水を届け、がれきを除去し、住宅の再建を手伝う様子を目の当たりにした。
「何が大切なのかを考えさせられた」と妻のアリソン・クロウリーさんは振り返る。「(オドネルさんは)『人の役に立つことがしたい』と考えた。以前から警官になりたいと思っていた」
1カ月以上たってようやく電力が復旧し、インターネットが使えるようになると、オドネルさんはネットで調べてアッシュビルの警察学校は年齢制限なしで入学できることを知り、すぐに応募した。
何カ月にも及ぶ試験や面接を受け、うそ発見器の検査や身元審査を経て入学が認められたオドネルさんは、7月から訓練を開始した。来年1月には卒業する予定だ。
アッシュビル警察の広報は、「ここで警官になる訓練を始めた人の中でジェリー(オドネルさん)は最高齢になると思う」と話す。
オドネルさんによれば、年下の同僚の中には元消防士や運輸保安庁職員、観光バス運転手など、やはりヘリーンをきっかけに警官を志した人も多いという。
アッシュビル警察をはじめ、全米の警察は人員不足状態にある。コロナ禍や黒人男性の死をきっかけに広がった警察に対する抗議運動の影響で、警官の採用やつなぎ止めは著しく困難になった。
アッシュビル警察では3年間で警官126人が退職した。約232人の人員のうち半分以上が辞めたことになる。
同時に警察学校の訓練生も記録的な少なさになり、結果として犯罪件数が増えたという。
そこで採用に力を入れたことが功を奏して訓練生の数が増え、オドネルさんが所属するクラスはここ数年で最も多い22人が卒業を予定している。
俳優としてのオドネルさんは、テレビドラマ「マッドメン」の主要登場人物ペギーの義理の兄弟役で何度も出演。24年のコメディ「50年後のサマーキャンプ」では、キャシー・ベイツや故ダイアン・キートンとテーブルを囲んでセリフの練習をした。
「みんなオスカー級ばかりだったから、自分は正直、邪魔しないようにしていただけ」とオドネルさんは冗談半分に振り返る。
オドネルさんが演じた役は警官や兵士が多く、時には悪役だったこともある。俳優になる前は米陸軍に4年間所属していた。
ハリウッドで培った40年のキャリアは、新しいキャリアに切り替える役に立ったとオドネルさんは言い、「役を演じる時は、『この人はここに至るまでにどんな経験をしてきたんだろう』と考えなければならない」「警察学校では共感の訓練に2週間をかけ、街で出会った相手に対し、単に危機的状況にある人としてではなく、ひとりの人間として接することを学んだ」と話している。
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