(CNN) 日銭がポケットの中でヒリヒリするころ、彼らはチャーター便に飛び乗り、機内後部へ移動してカードをシャッフルし始める。たいていはポーカー、時にはブーレをやるが、ほとんどの場合、金を賭けた何らかのカードゲームだった。
「着陸する頃には日当がなくなるんだ」と、現在もリーグに関わる米プロバスケットボールNBAの元選手は(身元を明かさないことを条件に)笑いながら語った。「10日間の遠征なんて、神様がお許しにならないだろう」
プロスポーツ選手が違法賭博の標的にされる理由を理解するには、選手たちの文化を知る必要がある。スポーツの世界には、競争と、可処分所得と時間を持て余した激しい競争心を持つ人々があふれている。
「まさに最悪の状況だ」と匿名を希望したNBAのスカウトは言う。
最近明るみに出た2件の賭博疑惑に、多くのファンは首をかしげた。1件目は現役NBAコーチで選手としても活躍したチャウンシー・ビラップス氏と現役のテリー・ロジアー選手が逮捕された事件だ。ビラップス氏は、ニューヨークの犯罪組織と共謀してポーカーゲームを仕組み、参加者から金を巻き上げた疑いが持たれている。ロジアー選手は、自身の出場する試合について意図的に情報を提供し、自身が関与する賭けで利益を得たとされる。
2件目は、米大リーグ(MLB)クリーブランド・ガーディアンズのルイス・オルティス投手とエマニュエル・クラセ投手の事件だ。2人は共犯者と協力し、特定の球種を投げることで試合を操作し、賭けを不正に成立させた疑いが持たれている。
何百万ドルとはいわないまでも数十万ドルを稼ぐ選手が、給料のほんの一部にしかならないギャンブルに手を染める理由は何なのか。なぜそんなリスクを取るのだろうか。
アスリートの根源的な性質、つまり何事にも勝ちたいという欲求こそが、彼らを一般人より優れた存在にしている。それと同時に、その競争への強い衝動とアドレナリンが、ギャンブルをこれほど魅力的なものにしている。
ラトガース大学のギャンブル研究センターは、賭け事に関する56の研究を比較した。その結果、78.9%がアスリートは非アスリートよりも高い頻度でギャンブルをすると結論付けたほか、75%がアスリートは非アスリートよりもギャンブルをする可能性が高いと結論付けていることがわかった。
NBAのスター選手、マイケル・ジョーダンさんは1993年のインタビューで「ギャンブルはやめられる」と語った。当時、ジョーダンさんのギャンブル問題が注目を集めていた。「問題は競争心なんだ。競争の問題なんだよ」
もちろん、すべての選手、あるいはほとんどの選手が最近の連邦捜査で明らかになったような闇の裏社会に足を踏み入れているわけではなく、八百長をしているわけでもない。告発された人たちの行動を弁解するものでもない。
だが、このようなことがどうして起こり得るのか理解できない人にとって、つまずきがどこから始まるのかを理解することは有益だろう。
「彼らは本なんか読んでじっとしていない」と、前出のスカウトは言う。「八百長は驚くけど、ポーカー? 全然驚かない。試合前のシュート練習で誰かが言うんだ、『100ドルでこのシュートを決められる』。コートの半分や4分の3から始まる。そして、全員、賭けに乗るんだ」
米国でカードゲームは長年にわたり、娯楽を愛する人たちにとっての楽しみだった。プロ野球選手のトニー・クーベックさんはかつてニュージャージー州の地元紙にMLBでヤンキースに在籍した新人時代、36時間に及ぶ列車移動について語った。
「ポーカーといえば、テーブルに100ドル札が並んでいる時代だ。当時はうまいプレーヤーが2万5000ドル稼いでいた時代だった」とクーベックさんは話した。
クーベックさんがデビューしたのは1957年のことだ。
20年以上前、バスケットボールで活躍したチャールズ・オークリーさんとタイロン・ヒルさんの間で、ヒルさんがオークリーさんに負っていたギャンブルの借金(数万ドルと報じられた)をめぐってトラブルになったことがある。2人は長年の友人だったがヒルさんに返済する気配がないことにいら立ったオークリーさんは、当時所属していたトロント・ラプターズのユニホーム姿のまま、フィラデルフィア・セブンティシクサーズとの試合前のシュート練習中にボールをヒルさんの頭めがけて投げつけた。この行為でオークリーさんは1万ドルの罰金を科された。
2人の対立は公になった。ささいなゲームに端を発した不和はこの2人だけの話ではなかった。多くのコーチが、チーム内の争いに嫌気がさし、カードゲームを禁止したり、少なくとも自分の知る限りではやめさせたりしていた。
「最近はあまり見なくなった」と元NBA幹部はCNN Sportsに語った。
しかしギャンブルを止めることは不可能だ。第一に、21歳以上であれば合法であり、ユタ州とハワイ州を除く全州で認められている。現在、スポーツ賭博は38州で認められている。NHL、NFL、MLB、NBAの4大プロスポーツリーグはいずれも自スポーツへの賭けに厳格な規則を設けているものの、NFLだけが選手に対して、遠征中のチームホテル内でのギャンブルやシーズン中のスポーツギャンブルの店への立ち入りを禁止している。リーグ規則ではさらに、コーチ、スタッフ、関係者がいかなるスポーツにも賭けることを禁じている。
そしてギャンブルは至るところにある。NBAのチームが本拠とする27都市のうち、17都市は市中心部にカジノを有している。
「警備員に聞けばわかる。カジノに行って2万ドルすっても気にもしない選手もいる。彼らにとって大金ではない。重要なのは金じゃない、勝つことなんだ」とスカウトは話す。
NBAのサマーリーグはラスベガスで開催されるが、元幹部によると、選手がラスベガス・ストリップ沿いのブラックジャックやクラップスのテーブルに足しげく通うのは珍しいことではない。「10ドルのテーブルじゃない。大金が動くテーブルだ」
もちろん、オンライン賭博の登場でもはや部屋を出る必要すらない。
「ギャンブルは、ドラフトキングスやファンデュエルのおかげで今やどこにでもある」と元MLB選手のジェイソン・ワースさんは話す。「文化の一部になっている」
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