(CNN) 英公共放送BBCが、その将来をめぐって巨大な政治闘争に巻き込まれている。保守派が編集上のミスに乗じて同局を非難する一方、リベラル派は同局には欠陥があるものの擁護する価値があると主張している。
トランプ米大統領は10日、BBCが1年前に放送したドキュメンタリー番組における誤解を招く編集について、同局に対し脅迫的な法的書簡を送り、一段の圧力をかけた。番組は自身の大統領選での再選キャンペーンに関する内容で、少なくとも10億ドル(約1540億円)の損害賠償を求めている。
BBCの広報担当者はCNNに対し、「書簡の内容を確認し、しかる後直接対応する」と述べた。
トランプ氏は、2期目の大統領就任期間中、CNNを含む他の報道機関にも複数の法的書簡を送っている。
トランプ氏の法的脅迫は多くの場合、何の効果も生まないが、ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズ、デモイン・レジスター各紙に対する訴訟は係争中だ。
10日、BBCのサミル・シャー理事長は、2024年10月のドキュメンタリー番組における「判断ミス」について、遅ればせながら謝罪した。BBCのティム・デイビー会長とニュース部門トップのデボラ・ターネス最高経営責任者(CEO)は、編集スキャンダルに関する報道が英国メディアを席巻する中、9日に辞任を申し出ていた。
誤解を招く編集が政治的動機によるものだったという兆候はなく、デイビー氏とターネス氏が事前にそのことを知っていたと確信させる理由もない。
しかしトランプ氏の弁護士は10日、BBCが「大統領選挙への干渉を企てるため、ドキュメンタリー番組を意図的かつ欺瞞(ぎまん)的に編集することで」大統領の名誉を毀損(きそん)したと主張した。
CNNが入手したこの書簡は、BBCを名誉毀損で訴える他、トランプ氏が「甚大な経済的損害と世評の失墜」を被ったと主張している。ただ放送当時、当該の誤りを指摘した人は誰もいなかったとみられる。
先週、長年BBCに批判的な論評を掲載してきた英紙テレグラフが、不適切な編集を暴露する「内部報告書」について報じ、その後この報道は雪だるま式に拡大した。
大統領選前に流れたこの動画は、トランプ氏が21年1月6日にホワイトハウス近くの広場で行った演説の様々な部分をつなぎ合わせ、あたかもトランプ氏が聴衆に共に議事堂まで歩き、「死ぬ気で戦う」と語りかけたかのように印象づけるものだった。
トランプ氏のその日の口調は確かに攻撃的だったが、実際の演説では「戦う」という呼びかけと、「勇敢な上下両院の議員たちを応援する」ために議事堂まで歩いて行くという提案は別個に行われたものだった。
シャー氏は10日、英下院委員会の委員長に宛てた反省の書簡の中で、BBCは「演説の編集方法が暴力行為を直接呼びかけているような印象を与えた」ことを認めると述べた。
誤解を招く編集に関する今回の暴露は、BBCの資金と将来をめぐる継続的な政治闘争を激化させた。保守派はこの誤りを利用し、同局を非難する新たな機会を得ている。
22年に短期間首相を務めた元保守党党首のリズ・トラス氏は9日、「米国大統領と世界がBBCの真の姿に気づき始めていることをうれしく思う。トランスジェンダーの思想から経済、ガザ問題に至るまで、あらゆる問題について真実を語らなかったことが、この国の政治と政府に甚大な損害を与えてきた。国営放送はこれで終わりにすべきだ」と投稿した。
一方、英紙フィナンシャル・タイムズの編集主幹で英国政治担当の主任コメンテーターでもあるロバート・シュリムズリー氏は、X(旧ツイッター)で、今回の論争の政治的側面を認識することが重要だと指摘。「BBCが重大な過失を犯したという事実は、同局を破壊しようとする右翼メディアによる真の、そして組織的なキャンペーンが存在するという点を否定するものではない」「どちらの点も同時に真実であり、たとえ過失がなくなったとしても、キャンペーン自体は終わらないだろう」との見方を示した。
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