今や企業の新たな選択肢になっている、「黒字リストラ」。業績が好調でも、人員を削減する企業が急増しています。
その背景には何があるのでしょうか。黒字リストラの体験者にも話を聞きました。
■「退職金とは別に、5000~6000万円の上積みも」会社と退職者にもメリット
高柳光希キャスター:
会社は黒字なのに、早期退職者を募る「黒字リストラ」を大手企業が相次いで発表しています。
パナソニックHDは、「早期希望退職プログラム」として、グループ内で1万人規模の人員削減を行っていく、と2025年5月に発表しました。
また、明治は、満50歳以上かつ勤続15年以上の管理職・総合職を対象に、「ネクストキャリア特別支援施策」を行っていくと、10月28日に発表しました。
さらに2024年10月に、大手電機メーカーを早期退職した木村ひろしさん(仮名・52)は、月給50か月分の退職金を受け取って、新たな道へ進んだということです。
黒字なので、会社の資金にも余裕があり、退職金を上乗せできるという状況です。
退職者にとっては、多くの退職金を受け取ることができ、再就職の支援にもなる側面があります。
TBS報道局経済部 岩井宏暁 記者:
ある大手企業では、多い人は退職金とは別に、5000~6000万円上積みされる人もいるということでした。
■背景には“社員の年齢バランス修正”
高柳キャスター:
黒字リストラを行う背景を見ていくと、社員の年齢バランスを修正する側面があるそうです。
【パナソニックグループ 社員の年齢構成】
・20代以下 15%
・30代 16%
・40代 20%
・50代 40%
・60代以上 9%
※国内社員 約6万人(2025年4月1日時点)
パナソニックグループでは、国内社員の半分ほどである、約3万人が50代以上という年齢構成比になっているということです。
ネガティブな意味の「赤字だからリストラ」ではなくて、黒字で経営改善をしたり、会社の中の年齢比率を構成したりする意味でも、早期退職者を募ることがあるそうです。
TBS報道局経済部 岩井 記者:
事業の環境が劇的に変わってきている中で、求められる人材も変わっていると思います。
例えば自動車業界では、自動車は動くものなので、今までは「走って、止まって、曲がって」の開発がメインでした。
今は、それをやった上で、自動運転の技術も出てきているので、ソフトウェアやAI開発などが必要になってきています。
そうすると、今までの製造工程とは違うので、新たな人材を入れていかないと、会社として世界と戦っていけないということがあると思います。
高柳キャスター:
自動車メーカーのマツダの一例を見てみると、4月に発表した「セカンドキャリア支援制度」では、▼再就職支援、▼引っ越し支援、▼上乗せ退職金もあるということです。
この制度を使って58歳で退職をした男性は、マツダの地元・広島を盛り上げるために、お好み焼き店へチャレンジしているそうです。
男性は、「会社から求められる人材像が変わっていくことを感じた」と話していました。
南波雅俊キャスター:
テレビ局でも「アナウンサー」というもの自体がいろいろ変わってきています。例えば、自分が50歳になったときに求められるスキルが変わった。でも外で何かやりたいことがあったり、外から求められることがあったりしたとき、一定程度の退職金をもらって外に出るのであれば、両方にとってプラスなのではないかと改めて思いました。
日比麻音子キャスター:
選択肢として幅広く考えることで、自分のキャリアを改めて考えるきっかけにもなりますよね。
■「人生100年時代」キャリアを考える上で会社はどう支援できるのか
高柳キャスター:
ただ、人材が“流れていってしまう”という側面を考えると、デメリットもあるのでしょうか?
TBS報道局経済部 岩井 記者:
いろいろ取材をしていると、やはり優秀な人ほど出ていってしまうと言います。退職金も上積みされるので、そういった側面もあると思います。
企業によっては、早期退職を募集する部署を制限するなど、技術流出をさせないような取り組みをしています。
マツダの場合は、マツダで培ってきたことを、いかに社会貢献できるか、ということや、そういった能力がその人にあるのかを、しっかりと見極めた上で退職していくということです。
高柳キャスター:
実際に会社の中で、「こういう人には残ってもらいたい」みたいなこともあるのでしょうか?
TBS報道局経済部 岩井宏暁 記者:
人事に携わる人の話では、企業として、この人に出ていって欲しいかなみたいなリストもあるそうです。
ただ、あくまでも希望なので、それを無理やり社員に押し付けることは絶対にあってはならないことです。あくまでも社員自身が将来のキャリアを考える上で、会社としてどういった支援ができるかを、重視しているということです。
日比キャスター:
どうしても今までの概念だと、「終身雇用」みたいなイメージが強いですが、企業側が求めているものも変わっています。例えば、働く側にとっても、若手がなかなか出世したくない、出世欲がないということもよく取り上げられます。いろんな世代においても考えられることですよね。
TBS報道局経済部 岩井 記者:
やはり「人生100年時代」と言われている中、定年まで働いていきます。しかし、その後の人生も長いので、残りの人生をどうやって働いていくのかを考えていかなければいけないわけです。
中高年の話のようになっていますが、実は20代や少し前の段階で「キャリア」というものを考えていくことが必要です。自分のキャリアは自分で築いていかなければいけない。そういったことが今、求められているのではないかと思います。
日比キャスター:
やはり大企業ならではの安心感や安定感が、なかなかそのきっかけに繋がらないという課題もあると思うので、世代問わず、幅広く多様性を持って考えていきたいですね。
南波キャスター:
大企業を辞めた知り合いの50代の先輩が、とてもいきいき働いているので、いろんな選択肢があるのかなと思います。
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<プロフィール>
岩井宏暁
TBS報道局経済部 自動車・重工・電機担当
国家資格「キャリアコンサルタント」保有
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