(CNN) インターネットの未来をかけた争いが劇的にエスカレートしている。オープンAIが21日に発表した新製品は、インターネットへの入り口を制する米グーグルの主力サービスと真っ向から対立する。
オープンAIが発表したデスクトップ向けウェブブラウザーの「チャットGPTアトラス」は、世界で週に8億人以上が利用する対話型AIのチャットGPTを活用し、ウェブサイトやSNSなどあらゆるオンラインサービスへの入り口とすることを狙う。ネット上でのユーザーのあらゆる行動において、チャットGPTがより直接的な役割を果たすことになる。このビジネスは20年にわたってグーグルが独占していたが、オープンAIはその地位を奪おうと賭けに出た。
AIウェブブラウザーは、競合するAI検索企業のパープレキシティも7月に「コメット」を発表している。しかしチャットGPTは、利用者の圧倒的な多さを考えればグーグルにとって最大の脅威であり、グーグル検索離れを引き起こす転換点になり得る。
オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)はアトラス発表のブログで「ブラウザーはあなたの作業やツール、文脈がすべて集まる場所だ」「チャットGPTで構築されたブラウザーは、あなたの世界を理解して目標達成を助けてくれる真のスーパーアシスタントへと私たちを近づける」とコメントした。
グーグルのウェブブラウザー「クローム」の中核をなすグーグル検索が、すぐに廃れることはないだろう。しかし消費者がかつて検索に頼っていた作業の一部にAIを利用し始めていることは、実態調査にも表れている。ピュー・リサーチの調査によると、グーグルの検索結果にAI生成の概要が表示されると、検索結果のリンクをクリックする頻度が減ることが分かった。ブルームバーグの報道によれば、アップルのサービス担当上級副社長は今年、同社の端末上での検索回数が4月に初めて減少に転じたと法廷で証言した。
アトラスの発表、そしてその成否によって、日常的な作業をAIへと劇的にシフトさせる用意が消費者にあるのかどうかが試される。
グーグルのブラウザーと検索エンジンでは、AIへの移行とリンクからの脱却が10年かけて徐々に進められてきた。しかしオープンAIのアトラスは、最初からチャットGPTをブラウジング体験の中心に据えている。
アトラスのブラウザーを立ち上げると、グーグルではなくチャットGPTの検索バーが表示され、お勧めのトピックや、例えば週末の旅行計画など生成AIでこなせるタスクなども併せて表示される。ページ上部のボタンをクリックすると、サイドバーにチャットGPTが表示され、ユーザーはここから質問したり、ページを要約してもらったりできる(例えば記事中の文章を選択して「これは何?」とチャットGPTに尋ねるだけで、「利益」と「調整後利益」の違いを説明してくれた)。
チャットGPTのエージェントモードでは、ユーザーの求めるタスクをこなすことができる。例えばニューヨーク市ロングアイランドシティー地区の地下鉄7系統の近くで安く飲めるバーを探して3人席を予約するよう頼んだところ、チャットGPTはハッピーアワーのあるクイーンズボロプラザ駅近くのカクテルバーを提案し、希望予約時間を尋ねてきた。
当然ながら、グーグルのウェブブラウザーも目指す方向は同じだ。しかも同社のブラウザーは、分析サイトのスタットカウンター・グローバル・スタッツの集計で、ウェブトラフィックのほぼ72%を占める。
グーグルのクロームでは、検索結果ページの上部に表示されるAIアシスタントの「ジェミニ」がウェブページの内容を要約したり、質問に答えたりしてくれる。グーグルはまた、家具を組み立ててくれる手伝いサービス業者を雇ったり、ユーザーのメールやカレンダーの情報をもとにホテルを予約したりといった作業がこなせるウェブエージェントの試験提供も行っている。
しかしアトラスの発表は、ウェブの未来に果たすグーグルの役割について疑問が浮上したタイミングと一致していた。これは米司法省がグーグルを相手取って起こした独禁法訴訟でも大きな争点になった。
グーグルに対してクロームの売却を命じなかったアミット・メータ裁判官の判断は、将来のネット検索に果たすAIの役割が大きな要因となった。
9月の裁判書面では、グーグルに対する是正措置について「(検索エンジン同士の)競争を促進すると同時に、検索におけるグーグルの独占が生成AI分野に持ち越されないことを保証する意図がある。原告側が提案した是正措置の多くは、後者の目的を念頭に考案された」と指摘していた。
オープンAIのブラウザーはまだリリースされたばかりで、チャットGPTほど広く消費者の心に響くかどうか分からない。しかし、チャットGPTに始まって検索、ウェブブラウザー、そしていずれはハードウェアに至るまで、ユーザーのテクノロジー利用の根幹を担おうとするオープンAIの野心がこれで一層鮮明になった。
それこそまさに、グーグルのやり方そのものだった。
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本稿はCNNのリサ・エアディチッコ記者による分析記事です。
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