
エルサレム(CNN) イスラエルは16日、国際社会からの非難を無視する形で、パレスチナ自治区ガザ地区の最大都市ガザ市への地上侵攻を開始したと発表した。激化する空爆の中、多くのパレスチナ住民がガザ市からの避難を進めている。
イスラエル当局によると、地上侵攻は市の周辺部から始まった。過去1週間で高層ビルの破壊や空爆が加速していた地域だという。
「ガザは燃えている」とイスラエルのカッツ国防相は16日に投稿。イスラエル国防軍(IDF)が「テロのインフラ」を攻撃し、人質の解放とイスラム組織ハマスの壊滅を目指していると述べた。イスラエルのネタニヤフ首相は、戦争が「重大な局面」を迎えているとし、ガザ市をハマスの最後の拠点の一つと位置づけた。
国連などは、今回の攻撃が既に壊滅的な人道危機をさらに悪化させると警告。ガザの一部では公式に飢饉(ききん)の発生が宣言されている。ガザ市と周辺にはガザの人口のほぼ半分に相当する約100万人が暮らしている。イスラエルは住民の避難を促しているが、IDFによると避難したのは約4割にとどまっているという。CNNはこの数字を独自に確認できていない。
国際社会からの非難や治安当局の懸念にもかかわらず、ネタニヤフ氏が地上侵攻を決断したことは、世界的な圧力に逆らって自らの条件で戦争を遂行しようとする意思を浮き彫りにしている。
国連の独立調査委員会は16日、イスラエルがガザでジェノサイド(集団殺害)を行っていると結論づけ、住民が「パレスチナ人としてのアイデンティティーを理由に集団的に攻撃された」と指摘した。イスラエル側は「歪曲(わいきょく)された虚偽の報告書を断固として拒否する」と反発し、委員会の廃止を求めた。
ほぼ2年にわたりラファやハンユニスのような壊滅的な被害を免れてきたガザ市も、今や同じ運命に直面している。16日には北部ガザで少なくとも93人、ガザ全域で100人以上のパレスチナ人が死亡したと、ガザの保健省や病院が明らかにした。
夜通しの激しい空爆に見舞われたガザ市の住民は、わずかに残った所持品を抱えて避難しようとしていた。CNNの映像には、シェイク・ラドワン地区の破壊された住宅が捉えられていた。中には完全に倒壊した建物もあり、人々はがれきの中を移動し、袋や毛布を運びながら南の避難先を探していた。
イスラエルの無人機が頭上を飛び交うなか、住民はCNNに対し、夜間の空爆はここ数カ月で最も激しいものの一つだったと語った。
ガザ市のマイサル・アドワンさんは、汗を滝のように流しながらマットレスや毛布を頭上に載せて運んでいた。「恐怖、恐怖、恐怖しかない」「一晩中、頭上で爆発が続いた」
イスラエル政府が8月初めに承認した作戦計画では、パレスチナ住民をマワシ地区に強制退避させた後にガザ市への攻撃を始めるはずだった。イスラエルはさらに、米国が支援するガザ人道財団(GHF)が運営する救援施設を計16カ所に拡大する予定だったものの、実際には約5カ所しか開設されていない。パレスチナの人々は多くの場合、食料や支援物資を求めて何時間も歩かざるを得ない状況が続いている。
ガザ中部や北部では、多くのパレスチナ人が荷物をまとめ、安全な場所を求めて必死に避難した。多くにとって、それは初めての避難ではない。沿岸の幹線道路には群衆があふれ、車がほとんど動かないほど混雑していた。
国連のトゥルク人権高等弁務官は国際社会に対し、イスラエルによるガザ市への侵攻を阻止するよう呼びかけた。
パレスチナ自治政府は国際的な介入を訴え、米国に行動を求めた。
しかし、イスラエルはトランプ米政権下から明確な支持を得ている。イスラエルが新たな攻勢の開始を発表した直後に米国のルビオ国務長官がエルサレムを訪問したことからも明らかだ。ルビオ長官は、ガザに残る48人の人質解放とハマスの権力放棄を要求したが、実現は難しいとの見方も示した。