
(CNN) 陸上世界選手権東京大会(世界陸上)の男子3000メートル障害の予選が13日に行われたが、ティム・ファン・デ・ベルデ(ベルギー)もカルロス・サンマルティン(コロンビア)も10位と11位でフィニッシュラインを越える姿は想像していなかっただろう。
だが、負傷したライバルを助けてゴールするというベルデの並外れたスポーツマンシップによって、この光景は今大会の象徴的な場面の一つとして記憶されそうだ。
レースでは、ほかの全ての選手がすでにゴールするか棄権した後の最後の直線で、ベルデが振り返り、サンマルティンが最後の障害を慎重に越えようと立ち止まっているのに気が付いた。
ベルデは小走りでサンマルティンのもとへ戻り、2人は肩を組んで一緒にフィニッシュラインを越えた。
「彼がつまずいているのを見て、『なぜ駄目なんだ?』と思った。我々は2人とも運が悪かったと思う。もしかしたら、一緒に不運を分け合えるかもしれない」とベルデはAP通信に語った。
レース中盤、ベルデは先頭を走っていたが、障害にぶつかり水濠(すいごう)に転倒。その直前にはサンマルティンも右足を引っ掛けて転倒していた。サンマルティンはレース後、車いすで退場した。
この時点で決勝進出に必要な上位5人入りの可能性は消えており、ベルデの心優しい行動につながった。
昨年の欧州選手権で転倒し鎖骨を折った経験を持つベルデは「トラック上で無力さを感じるのがどういうことか知っている」と話した。
この予選を制したのは、東京五輪とパリ五輪で金メダルを獲得したスフィアン・エルバカリ(モロッコ)で、8分26秒99でゴールした。世界記録保持者のラメチャ・ギルマ(エチオピア)が2位に入った。
サンマルティンは9分02秒20で10位、ベルデは0.01秒差の11位だった。
ベルデは「我々は2人とも競争者で、一生懸命練習している。もちろん、一番の目標は決勝だったが運に恵まれなかった。だから、ああしたんだ」と語った。