
【7月13日 AFP】米国のパム・ボンディ司法長官は12日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンを破棄し、偽のワクチン接種証明書を発行したとして起訴されていた医師に対する訴追を取り下げるよう司法省に命じたと発表した。
この突然の判断は、ユタ州の連邦裁判所での裁判が始まってからわずか数日後のことで、ドナルド・トランプ政権がワクチン懐疑派運動に追い風を与える形となった。
形成外科医マイケル・カーク・ムーア被告は2023年、ユタ州西部にある自身のクリニックの職員3人と共に「政府を欺く計画」を実行したとして司法省に起訴されていた。
ムーア被告は、政府が提供した2万8000ドル(約410万円)相当以上のワクチンを破棄または廃棄し、少なくとも1937枚の偽の接種記録カードを有償で配布したとされている。
また、保護者の要望に応じて子どもに生理食塩水を注射し、ワクチン接種を偽装した疑いも持たれていた。起訴内容がすべて有罪と認められた場合、ムーア被告には数十年の懲役刑が科される可能性があった。
裁判の開始を受け、トランプ氏の強硬派支持者である共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員は9日、ボンディ長官に書簡を送り、ムーア被告の訴追を取り下げるよう求めていた。
ボンディ長官はX(旧ツイッター)で、「ムーア医師は連邦政府が選択肢を与えなかったときに、患者に選択肢を与えた。彼が直面していた刑罰は不当だった。きょうで終わりだ」と投稿。起訴取り下げを後押ししたグリーン議員と、同じく共和党のマイク・リー上院議員(ユタ州)に謝意を示した。
この決定は、ボンディ長官が故ジェフリー・エプスタインの捜査対応をめぐり、右派活動家からの批判を浴びている中で行われた。
新型コロナのパンデミック(世界的流行)は、ロックダウンやワクチン接種を支持する立場と、それを自由の侵害とみなす立場の間で、米国社会に激しい分断をもたらした。(c)AFP