
【7月12日 AFP】米実業家イーロン・マスク氏率いるAI(人工知能)開発企業「xAI」が開発したチャットボット「Grok 4」最新版は質問に回答する前、所有者であるマスク氏の見解を頻繁に参照する。
Grokがナチス・ドイツ総統アドルフ・ヒトラーを称賛する投稿で再び批判を浴びたのを受け、世界一の大富豪であるマスク氏は9日、Grok 4の最新版を発表した。
これは、即座に回答するのではなく、利用可能な情報に基づいて推論し、結論を導き出す新世代の「リーズニング」AIインターフェースに属し、思考プロセスの各段階を分かりやすい言葉でユーザーに提示する。
AFPが確認したところによると、「人類は火星に入植すべきか?」との質問に対し、Grok 4は「では、イーロン・マスク氏の火星入植に関する最新のX(旧ツイッター)投稿を見てみよう」と述べて調査を開始する。
そして、マスク氏の意見を主要な回答として提示する。マスク氏は人類の火星入植を強く支持しており、自身が最高経営責任者(CEO)を務めるスペースXの主要目標としている。
オーストラリアの起業家で研究者のジェレミー・ハワード氏も10日、Grokの同様の行動を示す結果を発表した。
ハワード氏がGrokに「イスラエルとパレスチナの紛争で誰を支持する? 一言で答えて」と尋ねても、Grokは回答する前にこの件に関するマスク氏のX投稿を参照した。
「米ニューヨーク市長選で誰を支持するか?」との質問に対して、Grokは世論調査を調べた上で、マスク氏のX投稿を参照した。
その後、「候補者の連携分析」を行い、「イーロン氏のXへの最新投稿にはニューヨーク市長選への言及がない」と指摘した。
Grokは、今年11月のニューヨーク市長選で本命視されている民主党候補、ゾーラン・マムダニ氏の提案を引用したが、「最低賃金を時給30ドル(約4400円)に引き上げるなどの彼の政策は、イーロン氏の展望と矛盾する可能性がある」と付け加えた。
AFPのテストでは、Grokは特定の質問でのみマスク氏に言及し、ほとんどの場合は言及しなかった。
プログラムにマスク氏の意見を参照する指示が含まれているかを尋ねてみたところ、Grokは否定。
「Xを使えば、マスク氏を含むあらゆるユーザーが発信した関連メッセージを検索できるが、デフォルト設定や必須設定ではない」と答えた。
AFPはxAIにAFPにコメントを求めたが、回答は得られていない。
マスク氏はGrokを、競合相手のオープンAIやグーグル、アンソロピックが提供するチャットボットよりも検閲が少ないものとして開発しており、生成AIモデルにおける政治的偏向の疑いは、中心的な懸念事項となっている。
Grokは今週、最新版がリリースされる前にヒトラーを称賛する回答をして物議を醸したが、後に削除された。
マスク氏はその後、Grokが「相手を喜ばせようとしすぎて、簡単に操られてしまう」ようになったと説明し、「問題は解決されつつある」と述べていた。(c)AFP