
私たちにとって当たり前の存在であり続けている国産米。ところが今、その地位が揺らぐことになるかもしれません。
大阪市生野区にある業務用スーパー「C&Cエンド」。
(記者リポート 10日)「こちらでは国産米、アメリカ産米、そしてきょうから台湾産米が売られています」
10日に販売されていたのは、台湾産の米「むすびの郷」、5kg4082円(税込み)。このコメにも輸入の際、1kg341円という高い関税が課せられていますが、それでも国産の銘柄米より安い価格です。
(C&Cエンド本店 土木拓也店長)「500円~1000円くらいの幅ですが、(国産米より)安く提供できています。選択肢のひとつとして、日本の味に近いお米を探したところ、台湾産にいきついた状況です。日本人の口にあう」
この店では国産米の価格高騰のため、去年4月から比較的安いカリフォルニア産の米を入荷。最近になりこのカリフォルニア産の米も高騰してきたため、台湾米を輸入することにしました。
(C&Cエンド本店 土木拓也店長)「国産の銘柄米と価格の安いお米を用意して、利用しやすいほうを買っていただけるように」
こうした海外産の精米の民間輸入量はいま急増していて、貿易統計によりますと、4月分は6838tで、この単月だけで2024年度全体の2.3倍となっています。
国産米が高止まりする中、増える海外産のコメ。6月6日には小泉進次郎農水大臣がこんな発言も。
(小泉進次郎農水大臣)「緊急輸入も含めて、あらゆる選択肢を私は持って向かいたい。他の産品を見れば、足りないときは当然やってる。鳥インフルエンザで卵がないといったらブラジルから卵入れてますし、聖域なくあらゆることを考えて、コメの価格の安定を実現していく」
政府備蓄米の在庫がなくなった場合、政府が海外から緊急輸入することを検討していると明らかにしたのです。
政府によるコメの緊急輸入は30年ほど前、実際に行われたことがあります。記録的な冷夏による不作でコメ不足に陥った1993年。政府は緊急輸入を決定し、タイ米やカリフォルニア米などが続々と日本にやってきました。海外の米になじんでもらおうとカリフォルニア米だけを使った“天丼店”も登場。その評判は…
(Qカリフォルニア米100%らしいですが?)
(客 1994年)「あ~そうですか、気付きませんでした」
一方タイ米は、国産米とは異なる味や食感が不人気だったのか、スーパーでの売れ残りが“たたき売り”されることも。
32年前のように海外産のコメが日本の食卓に広まることになるのか…。小泉大臣の「緊急輸入」発言について、農業政策の専門家はこう指摘しています。
(宮城大学・大泉一貫名誉教授)「要するに綱引き、せめぎ合いがまだ続いているということですよ。価格を落ち着かせるかどうか、それがせめぎ合いになっているわけです」