
日本の探偵小説の草分け的存在である江戸川乱歩(1894~1965年)が暮らした東京都豊島区の「旧江戸川乱歩邸」が19日、改修工事を終えてリニューアルオープンしました。生涯46回の転居を繰り返し“引っ越し魔”と呼ばれた乱歩が亡くなるまでの約30年間を過ごした住宅で、当時を再現した書斎や、乱歩の自筆資料(複製)を鑑賞できます。【原奈摘】
乱歩は34年に借家だったこの住宅に移り住み、後に買い取りました。特に土蔵(豊島区指定有形文化財)を気に入り、書庫として使っていました。住宅と土蔵は、乱歩の長男、故・平井隆太郎さんが立教大学(豊島区)の教授だった縁で、同大学が2002年に譲り受け、蔵書約2万点とともに管理しています。
改修工事のため、24年1月から休館していました。今回、改修に合わせ、乱歩の関連資料を紹介する展示室を設けたほか、乱歩が原稿を執筆していた和室や応接室を内部から見学できるようにしました。
展示室には、乱歩が自身の歴史をまとめた自分史や、自身の活動を取り上げた記事や自筆メモを貼ったスクラップなどが並び、自分史をまとめた表は驚くほど細かく書き込まれ、乱歩の性格が伝わります。
江戸川乱歩記念大衆文化研究センター助教の杉本佳奈さん(39)は「引っ越し魔であり、記録魔、整理魔ですね」と語ります。土蔵は一般公開はされませんが、展示室のモニターに土蔵内部の写真を表示しています。
乱歩とこの住宅で同居していた孫の平井憲太郎さん(74)は「(乱歩は)大勢の人に来てほしいと思っていました。お客さんが来ると一緒に写真を撮っていました。優しいおじいさんでした」と懐かしみました。
一般公開は月、水、金曜の午前10時半~午後4時(祝日は休館)。入場無料。リニューアルオープンに合わせ、立教大学を運営する立教学院と東武百貨店が主催する「としま乱歩フェス」が開催中で、音声ガイドを頼りに謎解きをする「ミステリーウォーク」などが楽しめます。