
【4月18日 AFP】ミシュランガイドの調査員。その仕事は、報酬を得ながら世界最高のレストランで食事をすることだが、代償もある。自分の仕事について、友人にさえも、うそをつかなければならないことだ。
ミシュランガイドの総責任者グウェンダル・プレネック氏によれば、調査員へは年間8000件の応募がある。
重要な採用基準は、さまざまな場所を訪れ、異文化と新しい経験を受け入れる「プロ意識」と「寛容さ」だという。
ミシュランは、飲食店側に調査員であることを気付かれて特別扱いされることがないよう、秘密保持の一環で、何人の調査員を雇っているかは明らかにしていない。
ただ、現在は25か国出身のさまざまな年齢の男女が45か所で調査を行っていることは公表している。
■覆面調査
調査員の仕事はフルタイムで、全員、高級レストランやサービス業の経験者だ。ミシュランガイドのウェブサイトによれば、応募資格はシェフ、ソムリエ、またはホテル経営者として10年以上の経験があることとされている。
ミシュランはAFPに対し、新任調査員は、ベテランとペアを組み、最長2年の研修期間中に約800食を味わいながらミシュランのメソッドを学び、その後、覆面で調査活動を行うと説明した。
秘密の業務を知ることが許されるのは近い家族だけ。頻繁に旅行や外食をしている理由を偽るため、友人や親戚に対しては、飲食店の経営戦略に関する「コンサルティング」をしていると説明する調査員も多い。
店を予約する際は偽名で、いつもとは違う電話番号からかける。予約してきた人が記者やミシュラン調査員ではないか、電話番号をアプリで調べる飲食店も多いからだ。
審査には、優れた記憶力が必要とされる。料理、サービス、雰囲気、トイレの様子まで、メモを取らずに細部まで覚えておかなければならない。ただ、昨今は携帯電話で撮影することも多い。
食材の仕入れ先、地域社会に溶け込んでいるかどうかや財務状況なども調査対象となる。
最終的に重視されるのは、素材の質、調理技術の高さ、味付けの調和、シェフが自分の料理を通じて表現しようとした感情、飲食店として常に一貫性があるかどうかという五つの評価基準だ。一貫性を調べるには、何度も店に足を運ぶ必要がある。
最高評価は三つ星だが、星の判定は、調査員の満場一致で決定されることになっている。異論があった場合は、意見が一致するまで何度も店を訪れる。(c)AFP/Daphne Rousseau and Eric Randolph