
スーダン西部のダルフール地方は水不足が続いています。頼みの井戸は家から遠く、往復の道のりは危険。そのうえ、井戸は水の量が少ないため、底まで下りて水を集めなければならず、上り下りでケガをする人がたくさんいました。水をくんだあとも、重たい容器を担いで家まで歩いて帰らなければなりません。こんな重労働にもかかわらず、この地方では水くみはずっと、女の子と女性の役割でした。
13歳のマヤダさんも、家族のために日々水くみ役をつとめています。今にも崩れそうな古くて深い井戸。その底にしみ出る水をくむため、壁の鉄の取っ手につかまり、小さな穴に足をかけ、井戸の底まで下り、容器に水をかき集めてはまた壁をよじ登る毎日……。「水をくみに行くときは、いつも怖かった。井戸の底へ下りるときにケガをしました。弟も、落ちてケガをしたことがあります」とマヤダさんは振り返ります。
けれども2023年、彼女の生活は一変します。ユニセフとそのパートナーによって、村に給水施設が建設されたのです。太陽エネルギーで運営されるこの施設は、二つの給水設備と二つの動物用水受けが設置されています。「水をくむのが楽になって本当にうれしい」と笑顔を輝かせるマヤダさん。新しい給水施設では、井戸の上り下りはもちろん、ロープで重い容器を引っ張り上げる必要もありません。蛇口をひねるだけで、必要なときにいつでも、清潔で安全な水が得られるようになったのです。
ユニセフは、ウムドゥクン地域の八つの対象コミュニティーのために、六つの給水施設を建設し、二つの古い施設を修復しました。これにより、2万2000人以上の人々が、安全な生活用水を手に入れられるようになりました。<協力・日本ユニセフ協会 タイトルカット・陽魚>
・国名 スーダン共和国
・首都 ハルツーム
・面積 186万1484平方キロメートル(日本の約5倍)
・人口 4810万9000人(2023年推定、日本の約5分の2)(世界年鑑2024より)
・5歳未満児死亡率 1000人あたり55人(2021年、日本は2人)
・最低限の基礎的飲料水サービス(家庭) 60%(2020年、日本は99%)
戦争、災害、貧困……。厳しい環境の中で生きる、世界の子どもたちのいまを知り、私たちに何ができるのか考えるコーナーです。
ユニセフ(国連児童基金)とユニセフ協会(国内委員会)は、すべての子どもの命と権利を守るため、約190の国と地域で活動しています。日本ユニセフ協会は、国内で募金や広報活動などをしています。
東京都の品川駅から徒歩7分のユニセフハウスでは、展示を通して、この連載に出てくるような世界の子どもたちと出会い、子どもの権利について学び、考えることができます。QRコードからも展示内容を見られます。