
Q 走ると横腹が痛くなるのは、どうしてですか?(埼玉県所沢市、小5、荒木日和子さん)
A マラソンなどで走っていたらおなかが急に痛くなった、なんて経験がある人もいるのではないでしょうか。スポーツによるけがや疾患を治療している江戸川病院(東京都)スポーツ医学科の三浦瞬医師に話を聞きました。三浦さんは普段、運動中に息が切れる、膝や腰が痛くなったなどの症状に悩む人たちを診ています。
三浦さんは「横腹が痛くなる原因はまだはっきりとは分かっていません」と語りだしました。「ただ、最近の研究では、大腸などの腸の周りにある臓側腹膜と、おなかの全体を覆う外側の壁側腹膜が、おなかの中でこすれることによって痛みが出ているのではないかと考えられています」と教えてくれました。内臓を守る腹膜同士がこすれる、摩擦が原因で痛みが生じているということです。
痛みは人によって、右が多かったり、左が多かったりするかもしれません。おなかなら、どこでも痛くなる可能性があります。特に多いのは、体の中心からちょっと離れた肋骨(あばら骨ともいわれ、心臓や肺を守る胸にある骨)のやや下あたりといわれています。
以前は、「横隔膜(胸と腹の間にあって呼吸時にゆるんだり縮んだりする筋肉)に血流がいかなくなるから」、「おなかの中のじん帯が運動時の振動で引っ張られるから」などといわれていました。今、原因だといわれている腹膜のこすれも、確定的とまではいえません。
腹膜がこすれたことによる痛みならば、運動を中止することで痛みは治まります。逆に、運動をやめても痛みが続く場合は、また別の原因を考えた方がいいということになります。三浦さんも腹痛で受診した人を診たことがあるといいます。運動する時に痛みが生じ、やめるとよくなるものの、運動中に痛みが出るので「全力で走ることができない」という患者さんの悩みは深刻です。
予防に関しては、運動する前の食事が痛み発生のリスク(恐れ)になるといわれているので、運動する2時間前からはあまりたくさん食べないようにと伝えています。ただ、何を食べたらいいということまでは、はっきり分かっていません。
実際に痛くなってしまった時は、指で痛いところを押さえることや、呼吸を浅くすることで症状が治まったという報告はあります。でも、効果がないという例も多々あります。自分に合うかは試してみないとわかりません。
ただ、はっきりとは分かりませんが、体幹や腹筋の力が弱い人は痛みが出やすいのではないかとされています。普段からの運動量が多くても、腹筋をうまく使えていない人、体幹がしっかりしていない人がいます。運動を普段からする、しないにかかわらず、腹筋に力をしっかり入れることができるかが肝心です。若い人の方が痛みは出やすいとされていますが、10歳以下の小さい子にはあまり起きないようです。男女差もないといわれています。
「痛みが出ないよう、自分でできることは食事面に気をつけることです。体幹は自分で評価することは難しいと思うので、本当に困っているようなら整形外科などの医療機関で理学療法士に評価してもらいましょう。場合によっては、身体の機能改善のトレーニングをするリハビリをして体幹機能を向上させることも一つの手です」と三浦さんはアドバイスしてくれました。(井上梢)<え・清田万作>