ギリシャでは近年、夏の気温上昇によって各地で山火事が起こっています。2018年にアテネ北東部マラトンやアテネ西部キネタなどで起きた山火事は、死者100人、負傷者160人を超える被害をもたらしました。2023年には、記録的な熱波によってギリシャ全土で山火事が発生し、多くの森林や畑が焼けました。
東部の町ネア・マクリで、「5代目」を夢見て、代々受け継がれてきた祖父の養蜂業を手伝うマルケラさん(11歳)は、気温上昇の影響で、自分の代まで家業が続かないかもしれないと心配しています。山火事でミツバチたちが生きるのに欠かせない草木が失われているからです。「ほとんど毎日、家から避難したり誰かが亡くなったりするニュースを見ます。ここもいつ山火事が起きてもおかしくないでしょう? とても怖いです」とマルケラさん。山火事の起きていないところでも深刻な干ばつが続いています。
ミツバチの健康状態が悪くなり、数が明らかに減っていることに、マルケラさんは気候変動の影響を感じ、不安を募らせています。「この一帯が干上がって、花も咲かなくなっています」と祖父のマルコスさん。「花が咲かなければ、ミツバチはミツを作ることができません。ミツバチは生態系にとって不可欠な存在で、その環境が良いかどうかを測る目安でもあるのです。ミツバチが絶滅したら、それこそ世界の終わりです」と嘆きます。
今後、CO2(二酸化炭素)削減に向けた行動を取らなければ、山火事、熱波、干ばつはもっと悪化するでしょう。山火事の煙から発生する微小粒子状物質(PM2.5)は、他のPM2.5よりも子どもの呼吸器に最大10倍も有害で、特に5歳未満の子どもには大きな影響があります。子どもたちとその家族を守るため、ユニセフは政府とともに、医療品や生活必需品の提供や、不安や困難な状況を乗り越えるための支援を進めていきます。<協力・日本ユニセフ協会 タイトルカット・陽魚>
・国名 ギリシャ共和国
・首都 アテネ
・面積 13万1957平方キロメートル(日本の約3分の1)
・人口 1034万1000人(2023年推定、日本の約12分の1)(世界年鑑2024年より)
・5歳未満児死亡率 1000人あたり4人(2021年)
・ギリシャ全土で森林、耕作地、市街地15万5000ヘクタール以上が焼失(2023年8月、アメリカ・ニューヨーク市の面積の2倍)
戦争、災害、貧困……。厳しい環境の中で生きる、世界の子どもたちのいまを知り、私たちに何ができるのか考えるコーナーです。
ユニセフ(国連児童基金)とユニセフ協会(国内委員会)は、すべての子どもの命と権利を守るため、約190の国と地域で活動しています。日本ユニセフ協会は、国内で募金や広報活動などをしています。
東京都の品川駅から徒歩7分のユニセフハウスでは、展示を通して、この連載に出てくるような世界の子どもたちと出会い、子どもの権利について学び、考えることができます。QRコードからも展示内容を見られます。