自分は自分であって、他の人ではない。食事をする暇がないので、誰かに代わって食べてもらう、などできないのは当然である。また、私たちは誰でも、その「自分」を知っている。自分は背が高いか低いか、どんな顔をしているか、気が強いほうか弱いほうか、これらが自分で分からないという人はまずいないだろう。自分で自分自身に対してもつ、このような認識内容を、一般 に自己概念と呼ぶ。
しかし、これは正常な大人の場合の話である。発達初期の乳児は、自分の体と自分の周囲のものとの区別がつかない、自分とお母さんとは別の人間だということにも気付いていない、といわれている。そのような状態では、自己概念などは問題になるまい。いったいいつ頃から、 「自分」に気付き、「自分」という観念が生まれてくるのだろうか。
生まれて間もない乳児に、「自分の存在を感じているか」「自分をどう思うか」などと聞いてみ ても無意味である。そこで、問題を解明するためのテクニックの一つとして考え出されたのが、鏡に映った自分の姿を乳幼児に観察させる、という方法である。 鼻の頭に口紅で赤い印をつけて、子どもを鏡に向かわせたとする。その時、鏡映像を見て自分自身の鼻に触ったとしたら、その子は鏡に映っているのが自分だと分かっている、といえるであろう。 そのような方法を用いた研究の一つ、ルイスとブルックスーガンの実験で、彼らは、生後9ヵ月から24ヵ月までの、六つの年齢グループの子どもたちを比較している。
各年齢グループの子どものうち、鼻に印をつけないのに鼻に触った子がいたパーセントと、鼻に印をつけた時に鼻に触った子のいたパーセントとの差を示したのが図の縦軸である。この差が 大きいほど、単なる偶然ではなく、自分の鼻の印に気付いたが故に、鼻に触る行動が増えたことを示すといえる。これから明らかなように、鏡映像を自分だと気付く子どもは、15ヵ月から18ヵ月にかけての年齢で急に増え、24ヵ月の段階ではかなりの子が(1)「自分」に気付いていることが分かる。このようにして得られた結果は、乳幼児の単なる視覚的な自己認知を示すにすぎないともいえようが、これがその後の自己概念の発達の基礎となることもまた確実であろう。
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